2012年の環境提言

未来のための行動で現在も変える 人類の新たな共通目標を制定

第7段
未来のための行動で現在も変える 人類の新たな共通目標を制定

ここで私は、今回のリオ+20の会議に寄せて、三つの角度から具体的な提案を行いたい。

一、人類が今後目指すべきビジョンとなり、同じ地球に生きる人間としての行動規範の礎となる、持続可能な未来のための共通目標の制定に着手する。

一、国連の環境部門と開発部門を統合した新たな国際機関を設立し、「市民社会との協働」を柱に、持続可能な地球社会に向けた取り組みを力強く進める体制の確立を目指す。

一、一人一人が地域を足場に持続可能性を追求する担い手となれるよう、「エンパワーメント」から「リーダーシップの発揮」までの一貫した意識啓発を進めるための教育枠組みの制定を国連総会に勧告する。

ミレニアム開発目標に続く挑戦

第一の提案として、劣悪な環境下での生活を余儀なくされている人々の窮状の改善を求めた国連のミレニアム開発目標の精神を継承しつつ、持続可能な地球社会の建設のために互いにプラスの変化を起こし合うことを志向した、新しい目標の制定を目指すべきであると考えます。

ミレニアム開発目標は、マクロ的な経済指標の改善に重点を置く旧来の国際的な取り組みと違って、人々の窮状の改善に焦点を当てながら、〝2015年までに1日1ドル未満で生活する人々の割合を半減させる〟といった形で、明確な期限と数値目標を掲げた点で画期的なものでした。

現在のところ、極度の貧困に苦しむ人々の割合は2015年までに15%未満に低下し、目標達成が十分見込まれているほか、初等教育の普及が最貧国の間で前進してきたのをはじめ、より安全な水を18億人もの人々が新たに利用できるようになっています。

ただしそれらの改善も、経済的に最も厳しい生活を送る人々や、性別、年齢、障がい、民族などを理由に社会的に不利な立場に置かれた人々には十分に行き届かない傾向がみられます。今まで以上にきめ細かく、緊急性をもって対処していくことが欠かせません。

こうした中、2015年以降についても何らかの対応を求める声が高まっており、国連の潘基文事務総長の主導で設置された「地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル」の報告書でも、新たに「持続可能な開発目標」を設ける必要性が強調されていました。

そこでは、目標の方向性を検討する上で、「途上国にとどまらず、全ての国にとっての挑戦を網羅する」「気候変動、生物多様性の保全、災害に伴うリスク削減や復旧をはじめ、ミレニアム開発目標の対象外だった重要課題を組み込む」「各国政府とともに、地域共同体、市民社会、民間セクターを含む、持続可能な開発に関わる全ての人々を活動に取り込む」などの留意点を列挙しています。

私は今年1月に発表した「SGIの日」記念提言で、リオ+20での合意に、新目標を検討する作業グループを立ち上げて討議を開始することを盛り込むよう提案しました。「持続可能な開発目標」の内容を検討するにあたっては、先ほどの留意点に加える形で、次の二つの理念を反映させていくことを呼びかけたい。

一つは、より多くの国々や人々が、人道的な方式に基づく競争への質的転換に踏み出せるような、地球益や人類益に根差したビジョンを、目標の柱として位置付けていくことです。

先に触れた「人間の安全保障」や「ソフトパワー」、また「グリーン経済」などは、その最有力の候補となるものと考えます。

例えば、国連憲章には「世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少くして国際の平和及び安全の確立及び維持を促進する」(第26条)との目的が掲げられています。これは全ての国にとっての課題であると同時に、その取り組みが前進すれば、全ての国はおろか、地球上の全ての人々、そして未来の世代にとっても〝最上の贈り物〟になることは間違いありません。

また、今年は国連の定めた「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」ですが、この分野で実績のある国々が良い意味で貢献を競い合っていけば、貧困に苦しむ国々も環境負荷を増すことなく、人々の生存・尊厳・生活を支える社会基盤の整備を進めることができる。

それはそのまま、未来においての環境負荷の大きな軽減にも、必ずつながっていくはずです。

同じような構造は、リデュース(廃棄物の発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)の「3R」を通じて、循環型社会への転換を目指す活動にも当てはまります。

新目標の制定を機に、「他のためにし、他を益しつつ自己も益する」行動や「未来のためにし、未来を益しつつ現在も益する」行動のうねりが巻き起こるような項目を内容に反映すべきだと思うのです。

誰もが身近な場で実践できる項目を

もう一つ、この「人道的競争」の要素と並んで呼びかけたいのは、「地域」を足場に、より多くの人々が自らの行動を通じてプラスの変化を生み出し、その貢献が持続可能な未来につながっていることが実感できる、身近な目標を織り込んでいくことです。

ある意味でミレニアム開発目標は、貧困などの苦しみをどう減らし、生命や尊厳を危険にさらす脅威をいかに取り除くかといった「社会や人々に及ぼすマイナスの影響を可能な限りなくすこと」に重きを置くと同時に、初等教育の普及や教育面での男女格差の解消のように「主として国家の役割が問われる分野」が中心であったといえます。

こうした努力をさらに強力に進める一方で、「誰もが身近な場所で取り組むことができ、プラスの連鎖を社会に広げることのできる目標」を組み入れていくべきではないでしょうか。

例えば、緑化や自然保護を地域ぐるみの活動として定着させたり、住民主導で防災や減災のための街づくりを軌道に乗せる取り組みや、周辺地域と連携して地産地消の割合を高めたり、ゴミの削減や廃棄物のリサイクルを皆で協力して習慣化していく。また、それぞれの風土に適した再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組み、環境負荷を低減させていくような、〝地域発〟の主体的な取り組みです。

そこで重要となるのは、地方自治体と地域社会の役割であり、とりわけ都市の果たす役割は大きな鍵を握っています。

世界の都市の面積を合わせても地球の表面の2%にすぎませんが、その都市が地球の資源消費の75%を占め、大気や水の汚染物質と廃棄物の75%を排出しているだけに、世界の都市がどう行動するかが地球の命運を決めるとまで言われているのです。

ゆえに私は、新目標において特に「都市」に関する項目を設け、いくつかの指標を掲げた上で、自分たちの都市が前年比でどれだけ状況を改善させたのかを確認し合う流れを定着させるとともに、成功事例のノウハウを蓄積し、共有する制度を設けてはどうかと提案したいと思います。

こうした人々の生き方に則した目標を生み出すには、従来の政府間討議を中心としたアプローチだけでは困難が予想されます。

ゆえにリオ+20では、市民社会の代表が討議のプロセスに加わることも十分に保障した上で、より多くの人々が「これこそが私たちが果たすべき共通目標である」と納得し、そのために協力したいと思えるような新目標が、会議を契機に打ち立てられることを、強く願うものです。