2012年の環境提言

環境部門と開発部門を統合し21世紀型の国連へ体制を強化

第8段
環境部門と開発部門を統合し21世紀型の国連へ体制を強化

人々の苦しみの解消を最優先に

続く第二の提案は、リオ+20の中心議題の一つとなっている「持続可能な開発のための制度的枠組み」に関するものです。

この議題が取り上げられた背景には、多くの国が「持続可能な開発」に関する国連の取り組みの遅れを懸念し、関係諸機関の活動の重複や断片化、資金不足や調整不足などの問題を何らかの形で克服しなければならないとの認識の高まりがあります。

現状の課題を解消することは急務であるとしても、私は、改革の眼目がその点だけに置かれてはならないと考えます。むしろ今回の改革論議を通し、21世紀の世界の状況に即応した、新しい国連の運営のあり方を確立するために、その先駆的なモデルとなる国際機関の樹立を目指すべきではないかと訴えたいのです。

具体的には、①国連環境計画や国連開発計画などの関連部門の統合②希望する全ての国の討議への参加③市民社会との協働④青年層の積極的参画、を柱とした大胆な質的転換を伴う改革を果たし、「持続可能な地球機構」(仮称)を設立することを提案したい。

一つ目のポイントに関しては、国連が昨年、優先課題の筆頭に「インクルーシブで持続可能な開発」を掲げていたように、この問題を考える上で最も重視すべきことはインクルーシブ――全ての人々が参画し、その恩恵を受けることの追求にあります。

特に恩恵の確保という面から言えば、地球的な課題を〝脅威の様相〟で区分けし、国連の組織がそれぞれ対策を講じるアプローチでは、個々の改善は図られたとしても、問題が複雑化し相互が関連して危機の連鎖を起こしている現代にあって、人々の苦しみを根本的に解消することは容易ではない。そうではなく、〝苦しんでいる人々が何を求めているのか〟を出発点にして、尊厳ある生活と人生を送るための基盤づくりを総合的に進める体制を整えることが大切になっていると思われるのです。

次の二つ目のポイントは、希望する全ての国が意思決定のプロセスに参加できる枠組みづくりです。

国連環境計画や国連開発計画では、理事会のメンバー国でなければ最終的な意思決定の場に加わることができないという状況があります。しかし、持続可能な開発というテーマの重要性と対象範囲の広さを考える時、希望する全ての国の討議への参加を最優先に考えることが、何よりも欠かせない要件になってくるのではないでしょうか。

今、国際社会に求められている「行動の共有」は、そうした制度的基盤が保障されていてこそ、より堅固なものとなり、大きな力を発揮するものとなると思うのです。

市民社会との協働を制度に組み込む

この二つのポイントに加えて、私が最も強調したい改革は、「市民社会との協働」を制度的に組み込み、地球の未来のために行動する「万人のリーダーシップ」の結集軸となる国連機関をつくりだすことです。

これは、40年前にストックホルムで行われた国連人間環境会議を起点とし、一歩一歩重ねられてきた挑戦の延長線上に、明確な像として姿を結んでくる制度改革に他なりません。

同会議では政府間会議に並行し、市民社会の代表らによる「NGO(非政府組織)フォーラム」が開催されたほか、政府代表団にNGOのメンバーを加える呼びかけが行われました。

まさにそれは、主権国家の集合体としての性格が根強い国連の活動に、国連憲章前文の主語となっている〝われら民衆〟――すなわち、市民社会の声を反映させていく上で重要な一歩といえるものでした。そしてこの会議が、1970年代から80年代にかけて国連が人口や食糧といった地球的問題群をテーマに行った一連の国際会議の方向性を決定づけ、「市民社会の参画」という路線を敷く原点となったのです。

その伝統の上に画期的な前進を果たしたのが、92年の地球サミットでした。

国連の会議で初めてサミット(首脳会議)方式を採用したのと同時に、国連との協議資格を得ていないNGOにも一定の条件で参加の道が開かれたほか、科学界や産業界をはじめ、さまざまな人々が参加できる枠組みがつくられました。

その結果、ストックホルム会議ではわずか2カ国だった首脳の参加が94カ国にまで拡大する一方で、参加するNGOの数も4倍以上に増え、途上国で草の根の活動に取り組むNGOがその半数以上にのぼるなど、「市民社会の参画」は量的にも質的にも大きな前進をみたのです。

また、地球サミットを契機に、多くの国で政府代表団にNGOのメンバーを加える流れができました。

私が現在、対談を進めているドイツの環境学者、エルンスト・フォン・ヴァイツゼッカー博士は、地球サミットが開催までのプロセスも含めて、世界の大勢の人々が関わる〝巨大なプロジェクト〟となったことで得られた成果について、こう評価していました。

「もしこのようなNGOの推進力と一般市民の圧力がなかったら、すべては何カ国かの政府によって、おきまりの外交として安易にかたづけられ、その結果重要問題に関する『北』と『南』の深い溝は埋まることなく、会議は失敗に終わってしまっていたであろう」(宮本憲一・楠田貢典・佐々木建監訳『地球環境政策』有斐閣)

このようにして営々と積み上げられてきた成果を基盤に、今回のリオ+20を、「国連と市民社会との協働」を新機構の制度的な柱に組み込む機会とすべきではないでしょうか。

具体的には、国際労働機関で採用されてきた「三者構成」(各国代表を政府、労働者、使用者の三者で構成)の原則にならう形で、多様な行動主体からなる市民社会の広範な関与を保障する「四者構成」(各国代表を政府、NGO、企業、学術研究機関の四者で構成)の原則の導入を検討することを呼びかけたい。

国連には現在、企業などビジネス界に関するグローバル・コンパクトの枠組みと、大学などの高等教育機関に関するアカデミック・インパクトの枠組みがあり、国連のパートナーとして活動を支援するプロジェクトが立ち上げられています。

いずれも、それぞれの立場で〝なすべきこと〟の追求を目指した活動であり、私が先ほど新目標の制定に関して提起したような、地域や社会でプラスの価値を生み出し、世界にプラスの変化を広げることを志向した自発的な取り組みであるといえましょう。

リオ+20に向けての最初の意見取りまとめの文書でも、「意思決定に広範な人々が参加することは、持続可能な開発の達成のための基本的な前提条件である」と強調されていましたが、まずはこの分野で「国連と市民社会との協働」を具体的な制度として確立させた上で、その実績をもとに他の地球的問題群についても同様の制度の導入を進める流れをつくりだすべきであると提唱したいのです。