第2は、国連に「核廃絶のための有識者パネル」を創設し、核兵器ゼロに向けた軍縮プロセスにおいて、市民社会との協働体制を築いていくことです。
以前、冷戦の負の遺産として旧ソ連諸国に残された核兵器の廃棄と拡散防止の措置を、各国で支援する体制がつくられました。
その際、大量破壊兵器関連の科学者や技術者の能力を民生目的に向ける機会を提供するための「国際科学技術センター」が設置されたことがあります。
今後、核兵器ゼロに向け、すべての保有国で軍縮が始まる段階に入った場合、それをはるかに上回る国際的なサポートが求められることは必須です。
そこで、国連事務総長の下に設置されている軍縮諮問委員会の活動を通して、これまで蓄積された知識や経験を生かしつつ、核兵器に対象を特化した形で新たに有識者パネルを設置することを提案したい。
そして、軍縮以外にもさまざまな分野の専門家を糾合しつつ、核兵器ゼロの達成に向けて必要となる措置について、技術的側面も含めて、国連事務総長に諮問する体制を整えるべきだと考えるのです。
このほかにも、パネルが担うべき三つの役割を提起しておきたい。
(1)核兵器がもたらす脅威に関する報告書を定期的に発表し、多くの人々に実態を知らせて国際世論を喚起する。そして、その世論の高まりを、核兵器ゼロへの不可逆性を担保する最大の力としていく。
(2)今なお各地で、放射能汚染の被害に苦しむ人々の医療体制の充実を図る。
(3)核軍縮の履行と核兵器の禁止事項について、各国の遵守を一般市民の立場から監視し、違反を通報する「社会的検証」の制度について研究を進める。
また、パネル設置にあたっては、国連事務総長が発起人となり、国際機関や各国の軍縮専門家、パグウォッシュ会議、核戦争防止国際医師の会(IPPNW)、国際反核法律家協会(IALANA)、拡散に反対する技術者と科学者の国際ネットワーク(INESAP)をはじめとするNGO(非政府組織)、また専門的な知識や技能を有する学術機関や平和研究機関にも広く呼びかける形で、体制づくりに着手することが望ましいと思います。
私が創立した戸田記念国際平和研究所でも、これまでの実績や幅広い研究ネットワークをもとに全面的に協力していく所存です。
来年、日本の主催で核軍縮会議が予定されています。同様のパネルの構想を提唱するノルウェーや核兵器解体に伴う検証研究を重視するイギリスなどと協力し、日本のリーダーシップでパネル設置を実現させてほしいと願うものです。