2009年の核廃絶提言

自国の変化で他国の変化を促す 核の脅威をグローバルに削減

第9段
自国の変化で他国の変化を促す 核の脅威をグローバルに削減

「常設作業部会」をNPTの下に設置

第3は、核兵器の脅威の広がりを阻止し、低減させるための国際協力を進め、核兵器ゼロに向けての障害を取り除くことです。

そこでまず呼びかけたいのは、来年のNPT再検討会議への各国首脳の出席です。締約国はもとより、非締約国の首脳も、オブザーバーとして招聘するなど、事実上の“核問題に関するグローバル・サミット”として開催することを目指してほしいと思います。

その上で、各国の総意でNPTに「常設作業部会」を設け、まずは2015年までの5年間、核拡散防止に関する集中的な討議を行い、国際協力の強化を図ることを求めたい。

そして将来的には、この作業部会をベースに、NPT体制に関する常設の意思決定機関へ発展させていくことも視野に入れるべきではないでしょうか。

「核兵器のない世界」への環境を整えるには、核保有の理由となってきた抑止論の根拠、とくに脅威の実態を分析し、本当に必要な対応は何かを見きわめる作業が欠かせません。

冷戦の終結により、保有5カ国の間で互いの国に対し核兵器を使用するケースは、もはや想定しにくいものとなりました。

その結果、現在、核戦力の維持が必要とされる主な理由に挙げられているのは、(1)自国もしくは同盟国の生存を脅かす他の国家による核使用の抑止(2)核拡散につながる開発計画の阻止(3)非国家主体による核テロの防止(抑止)、などに限られるといえましょう。

(1)については徹底的な議論が必要となるケースであり、次の第4の項目で詳論するとして、(2)と(3)については、核兵器の使用や威嚇で根本的な解決を導けないことは、多くの専門家の指摘するところです。

この二つの脅威に対しては、核抑止力の強化ではなく、自国の変化で他国の変化を促す二つの挑戦――「保有宣言国や疑惑国を拡散防止の枠組みに組み込む努力」や「核開発技術と核関連物質の拡散を防ぐ国際制度の整備」で臨むべきではないでしょうか。

その最も象徴的な例で変化の兆しがみられるのが、包括的核実験禁止条約(CTBT)でしょう。現在、オバマ大統領は批准の意向を示していますが、もしそれが実現すれば、中国が批准に踏み切る可能性も開けてきます。

更に米中の批准をきっかけに、インドとパキスタンの署名や批准につながっていけば、CTBTの発効へ大きな前進となるに違いありません。そして、この変化がまた、未批准のイスラエルやイラン、未署名の北朝鮮にも、新たな決断を促す環境を整えることにもなります。こうしたプラスの連鎖を突破口に、NPTの枠外にある国々を含め、すべての国を網羅した核拡散防止体制の基盤が形成できると思うのです。

また、CTBTの発効以外にも、「カットオフ条約の早期締結」や「核燃料サイクルの国際管理の確立」「核テロ防止条約の批准促進」とともに、「再生可能エネルギーや省エネ技術の導入支援」「宇宙の非軍事化の徹底」などの措置が重要となるでしょう。

とくに、高まるエネルギー需要や、地球温暖化防止などの観点から、原子力発電の施設を増設したり、新たに導入を検討する国が増える中で、核兵器の拡散や核テロの脅威が高まることが懸念されています。

国連の潘基文事務総長も、このいわゆる「原子力ルネサンス」が、世界の新たな不安材料となることへの憂慮を示しています。

国際原子力機関による監視体制の強化だけでなく、再生可能エネルギーや省エネ技術の普及を含めた、エネルギー政策における国際協調の面からも、拡散防止の環境づくりを補強すべきではないでしょうか。

私は、来年の再検討会議でこうした重点課題を定め、「常設作業部会」で具体的な議論を進める中で、その次の再検討会議までの5年間をかけて、大幅な前進を期すべきであると呼びかけたいのです。そのために、現在、NPTの事務局としての機能も担っている国連軍縮室の強化も必要となると思います。