2012年のSGI提言

時代変革のビジョンを共有し 地球的課題への挑戦を!!

第8段
時代変革のビジョンを共有し
地球的課題への挑戦を!!

続いて、人々の生存・生活・尊厳に深刻な影響を及ぼすさまざまな脅威を克服するための具体策について言及したいと思います。

その前に提起しておきたいのが、「平和の文化」の母と呼ばれたエリース・ボールディング博士が強調していた二つの観点です(以下、『「平和の文化」の輝く世紀へ!』、『池田大作全集第114巻』所収)。

一つは、人々が未来へのビジョンを共有した上で行動することの大切さであり、もう一つは、〝200年の現在〟という時間軸に立って生きていくことの大切さです。

最初の点について、博士は次のようなエピソードを紹介してくれました。

――1960年代、軍縮の経済的側面について研究している学者の会議で、もし完全な軍縮が達成できたら世界はどうなるのかと、博士が尋ねた。すると返ってきたのは、「私たちにはわからない。私たちの仕事は、軍縮が可能であることを説くことにあると思う」といった、思いもよらない答えであった、と。

その時の経験を踏まえて博士は、「ある運動が、具体的に、どのような結果をもたらすかを思い描くことができずして、どうしてその運動に心から献身できるでしょうか」と、疑問を呈していました。

大事な問題提起だと思います。いくら平和や軍縮が必要であったとしても、運動の底流に具体的なビジョンが脈打っていなければ、厳しい現実の壁を打ち破る力を生み出すことは難しい。事態打開のために「心から献身」したいと願う人々を結集する紐帯になるものこそ、皆が心から納得して胸に抱くことのできる明確なビジョンであると博士は考えておられたのです。

“200年の現在” の時間軸と責任感

もう一つの観点である“200年の現在”とは、今日を起点として過去100年と、未来への100年の範囲を、自分の人生の足場として捉えるものです。

博士は、こう強調されていました。

「人間は、現在のこの時点だけに生きる存在ではありません。もし自分をそういう存在だと考えるならば、今、起こっている事柄にたちまち打ちのめされてしまいます」

しかし、“200年の現在”という、より大きな時間の中に存在すると考えれば、今年生まれた乳児から今年で100歳の誕生日を迎える高齢者にいたるまで、多くの人々の生きる時間に関わる可能性が大きく広がっていく。自分は、その「より大きな共同体」の一部を成す存在であるとの世界観をもって生きていくことが大切である、と。

それは、脅威に苦しんできた人々に思いをはせると同時に、新しい世代が同じ悲劇に見舞われないよう、未来への道を切り開く責任感を促すものなのです。

このボールディング博士の観点を踏まえつつ、私は「人道」「人権」「持続可能性」の三つの観点から、人類が共有すべきビジョンを提起したい。

「どの場所で起こった悲劇も決して看過せず、連帯して脅威を乗り越えていく世界」

「民衆のエンパワーメントを基盤に、地球上の全ての人々の尊厳と平和的に生きる権利の確保を第一とする世界」

「過去の教訓を忘れず、人類史の負の遺産の克服に全力を注ぎ、これから生まれてくる世代にそのまま受け継がせない世界」

私はこれまで30回にわたる提言を通じて、これらのビジョンを常に想起しながら具体的な提案を重ねてきました。どんなに複雑で困難な課題に取り組む上でも、ビジョンから逆算して考えるアプローチが、混迷深まる現実社会の袋小路から抜け出すための“アリアドネの糸”(道しるべ)となり、変革の波を巻き起こすための代替案の源となると信じるからです。

そこで今回は、対応が遅れれば遅れるほど未来世代への負荷が大きくなる、「災害」「環境と開発」「核兵器の脅威」の三つの課題に焦点を当てて解決の方途を探ってみたい。