2012年のSGI提言

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要旨

池田大作名誉会長は2012年1月26日、第37回「SGI(創価学会インタナショナル)の日」に寄せて、「生命尊厳の絆輝く世紀を」と題する平和提言を発表した。

大震災が浮き彫りにした課題

経済学者のアマルティア・セン博士は、深刻な被害をもたらす災害や経済危機などの脅威に立ち向かう上で、人々の生存や生活、尊厳を守り抜くための「人間の安全保障」のアプローチを地球的規模で進める必要性を訴え続けてきた。20世紀を代表する歴史家アーノルド・トインビー博士は「歴史の教訓」という言葉を強調していたが、世界で相次ぐ災害を前にして浮かんでくるのは13世紀の日本で日蓮が著した「立正安国論」である。

現代の時代相と、人間の安全保障の理念に照らし合わせて、「立正安国論」から浮かび上がる視座として、3点を提示したい。第1に、国家が最優先で守るべきものは、民衆の幸福と安全であるという思想哲学である。今の政治の対応はあまりにも遅すぎると言わざるを得ない。第2に、“自分だけの幸福や安全もなければ、他人だけの不幸や危険もない”との生命感覚に基づく世界観の確立を訴えていることである。第3に、内発的な力の開花(エンパワーメント)の連鎖が事態打開の鍵になるとの洞察である。

エンパワーメントは、災害からの再建を目指す上で、最も難しく時間を要する課題といわれる「心の復興」に関わるものである。SGI(創価学会インタナショナル)では、日蓮仏法の精神に立ち、世界192カ国・地域で、対話を根本に励ましの輪を広げながら、心と心の絆を育んできた。そして、災害のような緊急時には、会館に地域の被災者を受け入れ救援物資の搬入や配布、被災地での片付けの応援などに取り組んできた。社会のセーフティーネット(安全網)を強固にするためには、災害時に示されてきたような、苦しんでいる人々とともに歩もうとする気風を日頃から社会全体で高めつつ、支え合いや助け合いの絆をどう積み上げていくかが課題となる。

防災・復興に関する提言

世界では毎年、約1億6000万人が被災し、10万人の命が奪われている。災害に関してまず提案したいのは、被災者を支援する国際枠組みの整備である。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がこれまでケース・バイ・ケースで対応してきた「災害避難民への救援活動」を、正式な任務に盛り込むことを提案したい。UNHCRが常に支援に関われる仕組みを確保した上で、他の国際組織とともに人道主義に立脚した救援活動を展開し、人々の生命と尊厳を守る態勢を整えるべきである。

二つ目の提案は、防災から救援、復興にいたるまで災害に関する全てのプロセスにおいて、女性の役割を重視することを、国際社会の取り組みとして徹底させることである。国連安全保障理事会は2000年に画期的な1325号決議を採択し、平和構築における女性の重要な役割を再確認した。この1325号決議が対象とする範囲を拡大させて、防災や復興をふくめて運用すること、もしくは防災や復興における女性の役割に焦点を当てた新たな決議の採択の検討を呼びかけたい。

環境と開発の問題に関する提言 ※提言本文からの抜粋

『 災害に続き、第二の柱として取り上げたいのが環境と開発をめぐる問題です。

私は、国連のミレニアム開発目標に続く新たな取り組みとして、持続可能な未来を築くための共通目標の制定を強く呼びかけたい。

そしてリオ+20(国連持続可能な開発会議)で、新たな共通目標を検討する作業グループを設置し、対話プロセスを開始することを会議の合意事項に盛り込むべきだと考えるものです。 』

『 私は30年ほど前から、原発で深刻な事故が起こればどれだけ甚大な被害を及ぼすか計り知れないだけでなく、仮に事故が生じなくても放射性廃棄物の最終処分という一点において、何百年や何千年以上にもわたる負の遺産を積み残していくことの問題性について警鐘を鳴らしてきました。この最終処分問題については、いまだ根本的な解決方法がないことを決して忘れてはなりません。

日本は、地球全体の地震の約1割が発生する地帯にあり、津波による被害に何度も見舞われてきた歴史を顧みた上でなお、深刻な原発事故が再び起こらないと楽観視することは果たしてできるでしょうか。日本のとるべき道として、原子力発電に依存しないエネルギー政策への転換を早急に検討していくべきです。そして、再生可能エネルギーの導入に先駆的に取り組んでいる国々と協力し、コストを大幅に下げるための共同開発などを積極的に進め、エネルギー問題に苦しむ途上国でも導入しやすくなるような技術革新を果たすことを、日本の使命とすべきではないか。 』

核兵器の禁止と廃絶に向けての提言

世界には今なお2万発以上もの核兵器が存在している。地球上のすべての人々とその子孫に危害を加え、地球の生態系を破壊してなお何十倍、何百倍も余りある数量である。仮に自国民の一部が生き残ったとしても、そこに“未来”がないことは明らかである。SGI(創価学会インタナショナル)は、創価学会第2代会長・戸田城聖の「原水爆禁止宣言 」発表50周年にあたる2007年から「核兵器廃絶への民衆行動の10年」の運動を立ち上げ、民衆の声の結集に努めてきた。「核兵器のない世界」を求める声は、押し戻せないところまで前進してきている。今まさに求められているのは、条約という形をもって具体的な輪郭を帯びさせ、人類の共通規範として明確に打ち立てる作業なのである。

そのための準備として、今年か来年のうちに、有志国とNGOが中心となって「核兵器禁止条約のための行動グループ」(仮称)を発足させることを呼びかけたい。そして、2015年までに核兵器の禁止と廃絶に向けた基本条約の調印、もしくは最終草案の発表を広島・長崎で行うことを提案したい。平和への戦いも、人権や人道のための戦いも、何か一つの山を乗り越えれば、終わりが見えてくるようなものではない。一つの世代から新しい次の世代へ、断ち切ることのできない流れを作り、平和と共生の地球社会に向けて行動していきたい。