識者の声2012年のSGI提言

廣野良吉 成蹊大学名誉教授の声

廣野良吉 成蹊大学名誉教授の声

廣野良吉 成蹊大学名誉教授

世界は現在、気候変動、生物種の消滅、森林破壊、土壌劣化、水の枯渇など地球の生態系に深刻な影響を与えている環境的課題と、飢餓や貧困、人権蹂躙、武力を伴う紛争、核兵器による脅威など、人間社会が個人や集団の利益を守る過程で生んできた社会的課題という、両面の地球的課題を抱えています。人類の将来にとって最大の危機に直面していると言えるでしょう。

このような時代に、広範な環境と開発の両立への幕開けとなった1992年の地球サミットから20年後の今年6月に、ブラジルにおいて「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)が開催されることは、自分たちの生き方を深く反省する尊い機会を提供することになるでしょう。

今、多くの先進国が景気の低迷、失業者の増大、膨大な財政赤字に直面して内向きになっています。

そうした中で行われるリオ+20に向けて、池田大作氏が〝社会全体の安穏が訪れない限り、個々人の安心は得られない〟という信念のもと、日本の外交政策の基本である人間の安全保障の精神的基盤を強調し、「貧困や格差がもたらす地球社会の歪みの改善を求めたミレニアム開発目標の精神を継承しつつ……〝21世紀の人類の共同作業〟としての目標を掲げるべきだと訴えたい」として、「持続可能な開発目標(SDGs)」の必要性を世界の人々に提起していることは、心強い限りです。

世界が直面する環境的課題や社会的課題のいずれも短期的には解決できない課題です。また、これらは相互に連関しており、統合的で包括的な発想・対策・目標の設定がどうしても必要です。国際社会は、国際協力を通じてしか、これらの地球的課題を解決できないことを銘記しなければなりません。

これら両面の地球的課題を整合的に解決するためには、「人間が自然の一部であり、自然との共生しか、人類社会の存続はあり得ない」という認識、さらには「国内外を問わずあらゆる主体(個人、市民団体、社会的組織、企業、地方自治体、政府等)が相互にパートナーシップを組み、自己啓発、学習を通じて、自助・互助・共助・公助の精神で対処することが基本である」との理解を深めなければなりません。

東日本大震災と福島の原発事故は、2万人近い死者・行方不明者と34万人を超える避難者を出しました。

日本列島は、震災から1年後の現在、鎮魂の祈りに包まれていますが、この惨事の中で同胞が歯を食いしばって復旧・復興への努力を重ね、国内外からの多大な支援を体験した日本だからこそ、国境を越えた自助・互助・共助・公助の精神の重要性を、世界に発信する義務があると信じています。

創価学会をはじめ多くの宗教団体が提唱し行動してきたように、絶対的貧困、人権蹂躙、地球環境破壊の問題の解決、核兵器と大量破壊兵器の禁止を全世界に訴えながら、地球上の全ての人々が「一人一人の生命の尊厳」「多様性に寛容で、あらゆる差別のない社会」「恒久平和の世界の構築」を目指して、個人・集団・国家・国際社会のレベルで相互信頼と人類愛を深め、経済、社会、環境、文化の持続性を推進していくことが最も緊急かつ不可欠です。

その意味で、6月のリオ+20における、世界の宗教者による人間倫理の創造を呼びかける活動に大いに期待しています。

ひろの・りょうきち 1931年、静岡県生まれ。成蹊大学教授、政策研究大学院大学の客員教授等を歴任。国連開発計画など多数の国際機関に勤務してきたほか、国内では現在、研究機関、財団法人等で理事を兼務。

(聖教新聞2012年4月18日付掲載)