2013年のSGI提言

持続可能な未来のために世界の軍事費の半減達成を!

第11段
持続可能な未来のために世界の軍事費の半減達成を!

核保有国の間でも広がる認識の変化

実際、今や保有国の間でも、核兵器の有用性に対する認識の変化がみられるようになってきています。

昨年3月、アメリカのバラク・オバマ大統領は韓国で行った講演で「我が政権の核態勢は、冷戦時代から受け継いだ重厚長大な核兵器体系では、核テロを含め今日の脅威に対応できないとの認識にたつ」(「核兵器・核実験モニター」第398号、ピースデポ)と述べました。

また昨年5月のNATOサミットで採択された文書でも、「核兵器の使用が考慮されねばならないような状況は極めて考えにくい」(同、第401―2号)との見解が示されています。

いずれも、「核兵器が存在する限り」との前提に立って抑止政策を堅持する姿勢は崩していないものの、核兵器を安全保障の中心に据え続けねばならない必然性が現実的には低下していることを示唆したものとして注目されます。

このほか、核兵器に対する問題提起は、他の観点からも相次いでいます。

例えば、世界的な経済危機が続く中、トライデント(潜水艦発射弾道ミサイル)による核兵器システムの更新がイギリスで財政問題に関連して争点化したように、核保有に伴う甚大な負担の是非を問う声が各国で挙がり始めています。

世界全体で核兵器の関連予算は、年間で1050億ドルにのぼるといいます。

その莫大な資金が各国の福祉・教育・保健予算に使われ、他国の開発を支援するODA(政府開発援助)に充当されれば、どれだけ多くの人々の生命と尊厳が守られるか計り知れません。核兵器は保有と維持だけでも重大な負荷を世界に与え続けているのです。

加えて昨年4月には、核戦争が及ぼす生態系への影響についての研究結果をまとめた報告書「核の飢餓」が発表されました。

IPPNW(核戦争防止国際医師会議)とPSR(社会的責任を求める医師の会)が作成したもので、比較的に小規模な核戦力が対峙する地域で核戦争が起きた場合でも、重大な気候上の変動を引き起こす可能性があり、遠く離れた場所にも影響を与える結果、大規模な飢餓が発生して10億人もの人々が苦しむことになると予測しています。

SGIの新展示が目指しているもの

戸田第2代会長の「原水爆禁止宣言」を原点に、核兵器の禁止と廃絶を求める運動に長年取り組んできたSGI(創価学会インタナショナル)では、こうしたさまざまな観点を踏まえつつ、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)と共同して、「核兵器なき世界への連帯――勇気と希望の選択」と題する展示を新たに制作しました。

昨年8月に広島で初開催したこの展示は、政治的・軍事的観点からのみ論じられ、袋小路に陥ってしまっている核兵器の問題について、非人道性に加え、人間の安全保障、環境、経済、人権、ジェンダー(社会的性差)、科学など、多様な角度から問い直しを迫る内容となっています。

今回の展示の主眼は、それぞれの人が関心を持ち、懸念を抱いているテーマを入り口としながら、核兵器の問題を今一度、自身に深く関わる課題として考え直す機会を提供することで、「核兵器のない世界」を求める連帯の裾野を大きく広げることにあります。

私どもが半世紀以上にわたって核兵器の問題に取り組んできたのは、核兵器の存在自体が「生命の尊厳」に対する究極の否定であり、その禁止と廃絶を実現させる中で、“国家として必要ならば、大多数の人命や地球の生態系を犠牲にすることも厭わない„との非道な思想の根を断つことにありますが、理由はそれだけにとどまりません。

もう一つの大きな目的は、核兵器の問題というプリズムに、展示項目として先に列挙したような環境や人権といった、さまざまな観点から光を当てることで、“現代の世界で何が蔑ろにされているのか„を浮き彫りにし、世界の構造をリデザイン(再設計)すること――そして、将来の世代を含め、全ての人々が尊厳ある生を送ることができる「持続可能な地球社会」の創出にあります。

核時代に終止符を打つ道徳的な責任

そこで私は、三つの提案を行いたい。

一つ目は、「持続可能な開発目標」の主要テーマの一つに軍縮を当て、2030年までに達成すべき目標として「世界全体の軍事費の半減(2010年の軍事費を基準とした比較)」と「核兵器の廃絶と、非人道性などに基づき国際法で禁じられた兵器の全廃」の項目を盛り込むことです。

私は昨年6月の環境提言で、「持続可能な開発目標」の対象分野にグリーン経済や再生可能エネルギー、防災・減災などを含めることを提案しましたが、これに軍縮も加えるべきではないでしょうか。

このうち軍事費の削減は、現在、国際平和ビューローと政策研究所の二つのNGOが中心となって呼びかけており、SGIとしても「人道的活動としての軍縮」を重視する立場から、その運動に参加していきたいと思います。