2015年のSGI提言

人類共通の脅威に立ち向かう国連の創造的進化を!!

第9段
人類共通の脅威に立ち向かう国連の創造的進化を!!

ハマーショルド事務総長の信念

続いて、地球上から悲惨の二字をなくすために、従来の発想を超えた創造的なアプローチが早急に必要となると思われる課題について、具体的な提案をしたいと思います。

創設70年を迎える国連の歴史を振り返る時、胸に浮かぶ言葉があります。

それは、私がニューヨークの国連本部を初めて訪れた年(1960年)の年次報告書で、ダグ・ハマーショルド第2代事務総長がつづっていた一節です。

「国連は我々の世代を取り巻く政治状況がつくり出した有機的な産物である。しかし同時に、国際社会はその中で政治的な自意識というべきものを実現化したため、国際社会は国連という組織を有意義に用いることで、国連をつくり出すことになった政治状況に影響を与えることができる」

国連は主権国家の集合体としての制約や限界に常に直面しながらも、一方で、国連を舞台に育まれてきた〝国際社会としての意識〟こそが、国連の本来の使命を果たす突破口となりうるということです。

例えば、世界人権宣言に象徴されるように、国連憲章の精神を実現するために〝どの国であろうと揺るがしてはならない原則〟を明確に打ち出すことで、各国の政策にも影響を及ぼしてきました。

世界人権宣言の起草に深く関わった哲学者のジャック・マリタンは、「理論的な考え方において対立している人々も人権のリストに関して純粋に実践的な合意に到達することができる」(『人間と国家』久保正幡・稲垣良典訳、創文社)と強調しましたが、異なる思想的、文化的背景を持ったメンバーが最終的に意見を集約させることができたのも、国連という場の力があったからだと思えてなりません。

その後も国連は、「持続可能な開発」や「人間の安全保障」などの重要な指標の提起や、国際年と国際の10年を通し、喫緊の課題に焦点を当ててきました。

また、女性への暴力や児童労働をはじめ、国内レベルでは見過ごされがちだった深刻な問題を次々と取り上げ、国際的な対応を呼び掛けてきました。

私は、こうした各分野での重なり合うコンセンサス(意見の一致)の形成と、虐げられた人々が直面する問題への注意喚起を通し、国際法の対象を「国家」だけでなく、「一人一人の人間」に向け、生命と尊厳の保障を図る領域を広げてきたことに、国連でしか成し得なかった重要な役割があったと考えます。

ミレニアム開発目標」よりも踏み込んだ内容が期待される新目標の採択に向けて歩み出そうとする今、必要なのは、ハマーショルド事務総長が「慣習的な思い込みや型にはめられた手法といった鎧を脱ぎ捨てて」挑むことを呼び掛けていた国連の「創造的進化」(マヌエル・フレーリッヒ「世界機構の政治哲学を求めて」、『世界平和への冒険旅行』所収、光橋翠訳、新評論)を、国際社会が力を合わせて成し遂げることではないでしょうか。

昨年6月、その先駆けともいえる国連機関の強化が一つ実りました。

国連環境計画の強化策として、国連のすべての加盟国が参加できる討議の場が設置され、ケニアのナイロビで初めての「国連環境総会」が開催されたのです。そこには、環境問題に取り組む市民社会の代表や企業の代表も参加しました。

私はかねてから、地球的問題群の解決に臨む前提として何よりも欠かせないのは、「すべての国の討議への参加」を確保し、「国連と市民社会との協働」を積極的に進めることであると訴えてきました。

環境の問題だけでなく、人間の生命と尊厳を脅かす多くの課題に立ち向かうために、その二つの要素に支えられた〝行動の共有〟を築くことに、創設70年を迎える国連が果たすべき「創造的進化」の主眼はあると思われるのです。

そこで今回は、国連の使命を踏まえつつ、地球から悲惨の二字をなくすために〝行動の共有〟が急務になると思われる、①難民と国際移住者の人権保護、②核兵器の禁止と廃絶、③持続可能な地球社会の建設――に関して、それぞれ提案を行いたい。