青年の視点2016年のSGI提言

法華経の世界を貫く誓いと歓喜の生命劇

第4段
法華経の世界を貫く誓いと歓喜の生命劇

これまでの苦難も人生の糧に変える

仏法を貫く「徹して一人一人を大切にする」との精神には、このような視座に加えて、もう一つの欠くことのできない重要な柱があります。

それは、これまでどのような人生を歩み、どんな境遇に置かれている人であっても、誰もが「自分の今いる場所を照らす存在」になることができるとの視座であり、確信です。

目に映る「現れ(これまでの姿)」で人間の価値や可能性を判断するのではなく、人間に本来具わる「尊厳」を見つめるがゆえに、その輝きによって、今ここから踏み出す人生の歩みが希望で照らされることを、互いに信じ合う。

そして、これまで味わった苦難や試練も人生の糧としながら、自分の幸福だけでなく、人々のため、社会のために「勇気の波動」を広げる生き方を、仏法は促しているのです。

私どもの信奉する日蓮大聖人は、すべての人々に尊極の生命が具わり、限りない可能性を開花させることができるとの「一切衆生皆成仏道」の法理こそが、釈尊の説いた法華経の真髄であり、仏教全体の肝心であると強調しました。

法華経では、釈尊とその弟子をはじめとする、多くの人々が織り成すドラマを通じて、この法理が説かれています。

――まず、釈尊の説いた教えを理解した弟子の舎利弗しゃりほつ が、自分自身にも尊極の生命が具わっていることを心の底から実感し、「踊躍歓喜」する。

続いて、他の4人の弟子も、その歓喜のままに誓いを立てた舎利弗の姿と釈尊の励ましを目の当たりにして、同じく歓喜し、無量の宝を「求めずしておのずから得た」喜びを表すべく、自分たちの言葉で釈尊の教えを 長者窮子ちょうじゃぐうじの譬えを通して語りだす。

こうした誓いと歓喜のドラマが幾重にも続く中、多くの菩薩たちが、人々の幸福のためにどんな困難も乗り越えて行動する決意を、「?ともに同じく声をおこ して」誓い合う。

そして最後に、釈尊の滅後に、そうした実践を誰が担っていくのかが焦点となった時に、数え切れないほどの地涌の菩薩が現れ、いついかなる時代にあっても、どのような場所においても、行動を貫き通すことを誓願する――。

そこで広がっているのは、釈尊の教えに触れて、尊極の生命に目覚めて歓喜した弟子たちが、他の人々にも等しく尊極の生命が具わっていることに気づき、自他共にその生命を輝かせ、社会を照らす光明になっていきたいと決意し、次々と誓いを立てていく、〝誓願のコーラス〟ともいうべき光景です。

女の成仏の姿が周囲に広げた波動

なかでも特筆すべき場面の一つは、「私は、大乗の教え(法華経)を弘めて、苦しんでいる人たちを救っていきます」との誓いを立てた幼い少女(竜女)が、誓いのままに行動する姿をみて、多くの人々が「心大歓喜」(心の底からの大歓喜)をもって称えた場面でありましょう。

その歓喜の渦が巻き起こる中で、数え切れないほどの人々が、自分にも尊極の生命が具わっていることを覚知していきました。

つまり、当時の通念として、成仏に最も縁遠い存在として捉えられていた幼い少女が、自らの誓いのままに行動する姿を通して周囲に歓喜の波動を広げ、「一切衆生皆成仏道」の法理を証明する希望の存在となっていったのです。

大聖人も、この法華経の場面を踏まえつつ、人生の苦難を乗り越えようとする女性たちに、「竜女が跡を継ぎ給うか」(御書1262ページ)などの言葉を贈りながら、励まし続けました。

13世紀の日本にあって、相次ぐ災害に苦しむ民衆を救おうと、為政者をいさ めた大聖人は、何度も迫害を受けました。そうした中、流罪の地で弟子たちへの手紙をしたためたり、遠路はるばる訪ねてきた信徒に対し、真心を尽くして激励を重ねられました。

また、一つ一つの手紙を周りにいる仲間たちと寄り合って読みながら、皆で支え合い、苦難や試練を共に乗り越えていくよう、励まされていったのです。

私どもSGIが、創価学会の草創期からの伝統としてきた、小単位のグループで開催する座談会にも、そうした「誓い」と「歓喜」と「励まし合い」の世界が息づいています。

座談会に参加し、悩みがあるのは自分一人ではないと知り、苦難を乗り越えようと奮闘する友の姿に勇気をもらう。そして、決意を新たにした自分の姿が、さらに多くの友の心に力強い勇気を灯していく。

この励まし、励まされる心と心の往還を通し、一人の誓いが次の一人の誓いへと伝播する中で、困難に直面してもくじけることのない「希望の力」を共にわき立たせていく生命触発の場が、座談会です。

老若男女、社会的な立場や境遇の違いを問わず、同じ地域に暮らす人々が集まり、かけがえのない人生の物語や心の中に積もった思いに耳を傾け合いながら、共に誓いを深める座談会は、今や世界の多くの国々に広がっています。

それはまた、世界を取り巻く脅威や危機が拡大し、複雑化する中で、ともすれば埋没し、蔑ろにされがちな〝一人一人の生の重みと限りない可能性〟を取り戻すために、SGIが社会的使命として実践してきた「民衆の民衆による民衆のためのエンパワーメント」の基盤ともいうべき場にほかなりません。

平和運動や国連を支援する活力も、そこから生まれているのであり、まさに信仰実践と社会的活動は地続きの関係にあります。

私どもは、そうした往還作業を通し、「他人の不幸の上に自分の幸福を築かない」「一番苦しんだ人が、一番幸せになる権利がある」との誓いを共々に踏み固めながら、すべての人々の尊厳が輝く世界の建設を目指してきたのです。