青年の視点2016年のSGI提言

「世界人道サミット」の合意で難民支援の国際協力を強化

第10段
「世界人道サミット」の合意で難民支援の国際協力を強化

子どもの生命と権利を共に守る

続いて、国連の新目標が目指す「誰も置き去りにしない」世界を築くために、各国と市民社会の連帯した行動が急務となる課題として、①人道と人権、②環境と防災、③軍縮と核兵器禁止、の三つのテーマに関する提案を行いたい。

第一の柱は、人道と人権です。

具体的には、5月にトルコで行われる「世界人道サミット」に関し、二つの提案をしたいと思います。

一つ目は、深刻の度を増す難民問題について、サミットの場で「国際人権法に基づく対応を第一とすること」を確認した上で、特に難民の子どもたちの生命と権利を守るための対策を強化することを約し合うことです。

難民の数が戦後最大規模に達する中、多くの受け入れ国の間で、社会不安の広がりや財政負担の増大、また、難民を装う形での入国によってテロ行為が引き起こされることなどへの懸念が生じています。

こうした点を踏まえ、各国で何らかの対策を講じることが必要になってくるとしても、その対策は対策として、難民問題の対応の基盤は国際人権法の中核をなす「人間の生命と尊厳」の保護に置くことを再確認すべきだと思うのです。

紛争によって、多くの人々が突然、住み慣れた場所を追われ、生きる希望を奪われた状態は、災害で家を失い、避難生活を余儀なくされた人々の窮状と変わらないものです。

何より難民の半数以上を占める子どもたちは、なすすべもなく避難するほかなかった、紛争の最大の犠牲者にほかなりません。

昨年は、紛争下の子どもたちの保護に関する国連安全保障理事会決議1612の採択から、10周年にあたりました。

紛争によって子どもたちが暴力や搾取に巻き込まれる事態の防止はもとより、紛争から逃れるために避難を強いられてきた子どもたちを守ることが急務ではないでしょうか。

この点、ユニセフ(国連児童基金)のアンソニー・レーク事務局長も、「すべての子どもは、あたりまえの子ども時代を平和に享受する権利をもっています」(日本ユニセフ協会のホームページ)と強調しています。

国連の新目標でも、さまざまな脅威による深刻な影響を受ける存在として、子どもを筆頭に挙げており、この子どもたちの平和的に生きる権利の確保を〝扇の要〟として、難民への国際的な支援を強化すべきだと訴えたいのです。

人道危機の解決といっても、子どもたちがつらい経験を乗り越え、未来への夢を抱いて前に進むことができるようになる中で、希望の曙光しょこうは輝き始めるのではないでしょうか。

そうした子どもたちの笑顔はまた、故郷を離れて、新しい場所で生活を立て直そうとしている人々にとって、「生きる力」を取り戻す源泉となっていくに違いないと思うのです。

中東地域で進む受け入れ国支援

次に、「世界人道サミット」に関する二つ目の提案として、国連が主導する中東地域での受け入れ国支援の強化と、アフリカやアジアなど他の地域でも同様のアプローチを重視することを合意に盛り込むよう、提唱したい。

現在、世界全体の難民の9割近くが途上国で生活する状況となる中、水の確保や公共サービスの面で影響が出るなど、国際的な協力が得られなければ、受け入れを続けることが困難になってきている地域も少なくありません。

難民条約の前文では、「難民に対する庇護の付与が特定の国にとって不当に重い負担となる可能性」への留意を促した上で、「問題についての満足すべき解決は国際協力なしには得ることができない」と記されていますが、この条約の原点に脈打つ国際協力の精神を今一度想起し、難民問題に臨むことが求められていると思うのです。

私も昨年の提言 で、難民となった人々へのエンパワーメントを進めるにあたって、受け入れ国の青年や女性も一緒に教育支援や就労支援を受けられるような仕組みを各国の協力で設けることを呼び掛けました。

現在、この難民への支援と、受け入れ国への支援を組み合わせた国連主導の取り組みが、中東の5カ国で行われています。

「シリア周辺地域・難民・回復計画」と呼ばれるもので、難民への人道支援と併せて、受け入れ国の社会的インフラの向上を図り、住民の生活や雇用を支援していく取り組みです。

100万人以上のシリア難民が避難したトルコやレバノンをはじめ、多くの難民が身を寄せるヨルダン、イラク、エジプトの負担を国際協力によって軽減し、地域の安定に寄与することが目指されてきました。

これまで食糧の確保や安全な飲み水の利用、保健に関する分野などで改善が進んでおり、先月には、今後の方針と具体的な目標が打ち出されました。

私は、この国連主導の計画に関する討議をサミットで行い、課題や経験を共有しながら、資金面での協力を含め、今後の活動を軌道に乗せるために各国が連帯して行動することを、サミットの合意に盛り込むよう訴えたい。

また、日本の取り組みとして、これまでシリアと周辺国への人道支援を続けてきた経験を生かしながら、今後は特に「子どもたちの未来を育むための支援」に大きな力を注ぐことを呼び掛けたいと思います。

現在、トルコやレバノンなどでは、難民の子どもたちが学校や一時的な教育施設に通える状況も生まれていますが、大半の子どもは教育から取り残されたままとなっています。

国連の計画では、さらに多くの難民の子どもが「学ぶ機会」を得られる環境づくりを目指しています。ユニセフと連携し、シリアや周辺国での教育支援を進めてきたEU(欧州連合)とともに、日本がその分野での貢献を果たしてほしいと願ってやみません。

これに関連して、現在、日本のいくつかの大学が、国連難民高等弁務官事務所と協力して、難民となった若者たちに大学教育の機会を提供する「難民高等教育プログラム」を実施していますが、こうした若い世代への教育支援をあらゆる形で広げていくべきではないでしょうか。