青年の視点2016年のSGI提言

武器貿易条約への批准促進で紛争やテロの拡大を防止

第14段
武器貿易条約への批准促進で紛争やテロの拡大を防止

若者と子どもは社会変革の主体

折しも国連では、「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」に続く取り組みとして、「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム」が始まっています。

そこでは、重点項目の一つに「若者の参加の支援」が挙げられていますが、私はその一環として、植樹をはじめとする「生態系を基盤とした防災・減災」の取り組みを、若者や子どもたちと一緒になって、各地域で積極的に推進していってはどうかと提案したい。

昨年3月の第3回「国連防災世界会議」で採択された仙台防災枠組でも、災害リスクの削減には社会をあげての関わりと協力が必要であるとし、若者と子どもを〝変革の主体〟と位置付けて、防災に貢献できるような環境づくりが欠かせないと強調されています。

これまでSGIは、他のNGOとともに「ESDの10年」の制定を呼び掛けた2002年以来、「変革の種子」展や「希望の種子」展などの環境展示を各地で行ってきました。

この展示は、小・中学校や高校の生徒たちが数多く訪れる環境教育の場ともなってきたものです。

私どもがESDを重視してきた理由も、人間と環境との切っても切れないつながりを学びながら、教育の重要課題として牧口初代会長が提起していた「応用の勇気」を、子どもから大人にいたるまで、それぞれの地域で力強く発揮する輪を広げていきたいとの思いからにほかなりません。

このように地域を足場にした行動を積み重ねる中で、地球環境を守るための確かな軌道も敷かれていくのではないでしょうか。

通常兵器の拡散が招いた甚大な被害

最後に第三の柱として、軍縮と核兵器禁止に関する提案をしておきたい。

一つ目は、人道危機の悪化や各地で相次ぐテロ行為の背景にある「通常兵器の拡散」に歯止めをかけるための制度強化です。

紛争地域に大量に流入した拳銃や自動小銃などの小型武器によって、毎年、世界で非常に多くの人たちが命を落としています。

この〝事実上の大量破壊兵器〟とも呼ばれる小型武器をはじめ、戦車やミサイルなど通常兵器の取引を包括的に規制する武器貿易条約 が、2014年12月に発効しました。しかし、現在の批准国は79カ国で、焦点となる武器移転の報告制度のあり方についても合意をみていません。

昨年8月、メキシコで第1回締約国会議が行われましたが、報告内容を一般に公開するのか、対象となる武器はどこまで範囲が及ぶのかなど、多くの点で意見が完全には集約できず、結論が持ち越されることになったのです。

武器取引の規制は、21世紀の世界の平和を展望する上で決して放置することのできない課題として、私も1999年以来、毎年の提言などで繰り返し訴えてきたテーマでした。

難民問題が深刻化する今、この条約を基盤にして通常兵器の蔓延に終止符を打つことが、ますます切実な課題となっています。

多くの武器の存在が、紛争の泥沼化を招く要因となり、多くの人々を難民状態に追いやる状況を生み続けているだけでなく、紛争が終結しても再燃の恐れが残るために、人々が安心して帰還する道までも塞いでしまうのです。

なかでも小型武器は、持ち運びや取り扱いが容易であるため、子どもたちが兵士として動員される状況も招いています。

その結果、世界で30万人もの子どもたちが、兵士として戦闘に参加させられ、命を落としたり、心に深い傷を負っているのです。

また、各地で相次ぐテロの拡大を防ぐ上でも、通常兵器の取引を厳格に規制することは避けて通れない取り組みです。

これまで、テロ防止のための条約が数多く整備されてきましたが、武器貿易条約との相乗効果によって、テロ防止の体制を強化することが急務ではないでしょうか。

紛争の長期化や難民の増大に加え、子ども兵士やテロ問題の背景にあるのが、通常兵器の蔓延にほかならず、武器貿易条約を柱に、各地で高まる〝憎しみと暴力の連鎖〟を押しとどめる防波堤を築き上げねばならないと訴えたいのです。

国連の新目標でも、武器取引は「暴力、不安および不正義を引き起こす要因」であるとし、2030年に向けて違法な武器取引を大幅に減少させることが打ち出されました。

私は、この目標を軌道に乗せる誓いの証しとして、各国が武器貿易条約への批准を早急に果たしていくことを呼び掛けたい。

また、報告制度についても、情報の一般開示や、武器取引の数量の明記など透明性を十分に確保し、条約の実効性を運用面でも高めることを望むものです。