青年の視点2016年のSGI提言

青年世代の誓いの深さが人類の未来を決する鍵に

第17段
青年世代の誓いの深さが人類の未来を決する鍵に

「人道の誓約」と意欲的な国連決議

こうした状況の打開を求めて、昨年のNPT再検討会議への提出以来、賛同国が広がっているのが「人道の誓約」です。

「核兵器を忌むべきものとし、禁止し、廃絶する努力」を、国際機関や市民社会などと協力して進める決意を明記した誓約には、国連加盟国の半数を優に超える121カ国が参加するまでになっています。

その誓約の中で、早急に開始すべき具体策として提起されているのが、核兵器の禁止および廃絶に向けた法的なギャップを埋めるための効果的な諸措置を特定し、追求することです。

昨年の国連総会でも、その追求を呼び掛ける決議がいくつも提出される中、効果的な措置について実質的な議論をするための公開作業部会の開催を求める決議が採択されました。

決議では、ジュネーブで年内に行われる公開作業部会を「国際機関や市民社会の参加と貢献を伴って招集すること」と併せて、「全般的な合意に到達するための最善の努力を払うこと」が明記されています。

NPT再検討会議での停滞を乗り越えて、実りある議論を行い、国際司法裁判所が勧告していた「核軍縮に導く交渉を誠実に行い、かつ完結させる」道を何としても開くよう、強く呼び掛けたい。

非人道性の観点からも、特に私は、①核報復のための警戒態勢の解除、②〝核の傘〟からの脱却、③核兵器の近代化の停止、の3項目について、市民社会の声も踏まえながら議論を進めることを提案したい。

最初の2点について言えば、非人道性の観点からも軍事的な有用性の面からも、核兵器が実質的に〝使うことのできない兵器〟となっている状況を踏まえ、まずもって着手すべき課題だと考えるからです。

2度の世界大戦を機に、各国が開発を競った化学兵器や生物兵器が、その非人道性ゆえに、どの国にとっても〝使うことが許されない兵器〟となった歴史を、今一度、想起すべきではないでしょうか。

以前、アンゲラ・ケイン前国連軍縮担当上級代表もこう訴えていました。

「どれだけの国が今日、自らが『生物兵器保有国』であることや『化学兵器保有国』であることを誇るでしょうか。攻撃か報復であるかにかかわらず、いかなる状況下であれ、腺ペストやポリオが兵器として使用されることが合法であると、誰が論じているでしょうか。私たちが、〝生物兵器の傘〟について話をすることがあるでしょうか」(2014年4月、ニュージーランドのビクトリア大学での講演)

何より、軍事・安全保障上の核兵器の役割低減は、2010年の再検討会議での最終文書でも、保有国が速やかに取り組むべき課題の一つとして明確に掲げられていたものでした。

その意味からも注目すべきは、昨年、ブラジルなどが国連総会に提出した決議で、核兵器の役割を低減させる取り組みを「核保有国を含む地域同盟の一員であるすべての国」に奨励したことに加え、日本が主導した決議においても、「関係する加盟国」に対して役割低減に向けた見直しが呼び掛けられた点です。

この総会決議を主導した日本は、「関係する加盟国」の先頭を切る形で、〝核の傘〟による安全保障からの転換に着手すべきではないでしょうか。

G7(主要7カ国)のサミットに先立ち、4月に広島で外相会合が行われますが、核兵器の非人道性に関する議論をはじめ、北朝鮮の核開発などの拡散防止の問題や、北東アジアの非核化に向けた核兵器の役割低減についても議論を行うことを強く望むものです。

核開発と近代化が世界に及ぼす弊害

3点目の「核兵器の近代化」がもたらす問題については、昨年の提言 でも警鐘を鳴らしましたが、核兵器の維持のために年間1000億ドル以上もの予算を費やし続けることにより、結果として〝地球社会の歪み〟を半ば固定化する恐れがあることです。

南アフリカ共和国などが提案した総会決議でも、この点に関し、「人間の基本的ニーズがいまだ充足されていないこの世界では、保有核兵器の近代化に充てられる膨大な資金は、このような目的でなく持続可能な開発目標を達成するために振り向けることができる」(「核兵器・核実験モニター」第482―3号)と、提起されたところでした。

このまま核兵器の近代化を進めることは、次の世代やそのまた次の世代まで、核兵器の脅威にさらされることを意味するだけではありません。核兵器が使用されない状態が続いたとしても、国連の新目標を達成するための道を閉ざしかねず、〝地球社会の歪み〟が今後も続く事態を意味するのではないでしょうか。

「核軍縮は国際的な法的義務であるのみならず、道徳的・倫理的至上命題である」(同)とは、総会決議の提案にあたって南アフリカ共和国の代表が訴えた言葉であります。

その思いは、原爆投下によって筆舌に尽くしがたい苦しみを味わってきた被爆者や、核開発と核実験の影響で被害を受けた各地の〝ヒバクシャ〟をはじめ、「人道の誓約」に賛同した国々、そして平和を求める多くの人々の一致した思いではないでしょうか。

私どもSGIも、昨年のNPT再検討会議で発表された「核兵器の人道的結末に対する信仰コミュニティーの懸念」と題する共同声明に加わり、キリスト教、ユダヤ教、イスラムなどの各団体の代表とともに、次のようなメッセージを発信しました。

「核兵器は、安全と尊厳の中で人類が生きる権利、良心と正義の要請、弱き者を守る義務、未来の世代のために地球を守る責任感といった、それぞれの宗教的伝統が掲げる価値観と相容れるものではない」

「核兵器を禁止する新たな法的枠組みに関する多国間交渉について、すべての国々に開かれた、いかなる国も阻止できない場における、これ以上の遅滞ない開始を訴える」

核開発競争は、軍事面でも意味を失いつつあるどころか、保持し続けるだけで世界に深刻な負荷を与え続けるという意味で、かつて牧口初代会長が軍事的競争の限界を論じていたように、実質的に破綻をきたしているとの認識に立つべきだと思うのです。

年内にジュネーブで行われる公開作業部会で、「核兵器のない世界の達成と維持」のために必要となる効果的な措置をリストアップし、国連のすべての加盟国が取り組むべき共同作業の青写真を浮かび上がらせることができるよう、建設的な議論を行うことを切に希望するものです。

そして、2018年までに開催されることになっている「核軍縮に関する国連ハイレベル会合」を目指し、核兵器禁止条約の締結に向けた交渉開始を実現に導くことを訴えたい。

世界青年サミットを継続的に開催

明年は、戸田第2代会長の「原水爆禁止宣言」発表から60周年にあたります。

この宣言を原点に活動を続けてきたSGIとしても、核兵器のない世界への潮流をいよいよ揺るぎないものに高めていきたい。

そして、多くの国と市民社会が力を合わせ、民衆のイニシアチブによる〝国際民衆法〟としての意義も込めながら、核兵器の禁止と廃絶を何としても実現したいと決意するものです。

「核兵器は過ぎ去った時代の象徴でありながら、今も現実の世界に甚大な脅威を突きつけています。しかし、私たちが紡いでいく未来には核兵器の居場所などありません」

昨年8月、広島で行われた「核兵器廃絶のための世界青年サミット」で発表された「青年の誓い」の冒頭の一節です。

SGIなど6団体からなる実行委員会が主催し、23カ国から青年が集ったサミットには、アフマド・アレンダヴィ国連事務総長青少年問題特使も出席し、被爆体験の継承や同世代の意識啓発をはじめ、人類共通の未来を守るための行動が誓い合われました。

その成果は、国連総会第一委員会の関連行事として10月にニューヨークで行われた報告会でも発表され、若い世代が核兵器のない世界の実現に向け、国連や各地域でどのように行動し、問題解決のために参画できるかが議論されました。

今後も志を同じくする人々や団体とともに、「核兵器廃絶のための世界青年サミット」を継続的に開催していきたいと思います。

「核兵器の廃絶は私たちの責務であり、権利だ。核廃絶のチャンスが失われるのを、もはや黙って見過ごしはしない」

「私たち青年は、あらゆる多様性と深い団結のもと、この目標の実現を誓う。私たちは『変革の世代』なのだ」

国の違いを超えて青年たちが広島で分かち合った誓いが、世界に大きく広がっていけば、乗り越えられない壁などなく、実現できない目標などありません。

若い世代の心に脈打つ誓いの深さこそが、核兵器によって多くの生命と尊厳が踏みにじられる世界ではなく、すべての人々が平和的に生き、尊厳を輝かせていくことのできる世界を築く何よりの礎なのです。

私どもSGIは、「変革の世代」である青年の連帯を基盤としながら、核兵器の禁止と廃絶とともに、国連の新目標の達成を後押しし、「誰も置き去りにしない」世界への軌道を確かなものにすることを、ここに固く誓うものです。