青年の視点2016年のSGI提言

創価大学非常勤講師 奥脇栄子(青年学術者会議)

創価大学非常勤講師 奥脇栄子(青年学術者会議)

今回の提言では、国連の新しい目標が掲げる「誰も置き去りにしない」との誓いを踏まえながら、特に教育と対話の重要性に光が当てられています。

中でも、シリア紛争などに伴う難民問題をめぐり、多くの人々が苦しんでいる状況を見過ごしてはならないとし、「不善」の罪を問わない社会の行く末について〝関係性の網〟の観点から警鐘が鳴らされています。

私の研究テーマであり、アメリカ女性劇作家の草分け的存在として知られるリリアン・ヘルマン(1905~84年)もまた、社会悪の看過を容認する思想に怒りを持ち続けた劇作家でありました。

ヘルマンは、ナチズムが台頭した時代やマッカーシズムの全盛期において、自らの多くの劇作品を通し、恐れることなく社会問題に取り組みました。

『ラインの監視』と題する劇作品で登場人物が述べる、「この世界で、ぼくの子供たちだけが子供ではない」(小田島雄志訳)とのセリフは、世界のあらゆる問題の重要な解決策につながるヘルマン自身の信念を表現したものともいえます。

つまり、自分の子どもだけではなく、目の前で苦しんでいる一人の子どもの命を守りたいとのヘルマンの強い信念は、仏法の尊厳観とも共通するものであり、全ての人々に内在する「慈悲」の精神であることを、あらためて痛感しました。

提言では、「徹して一人一人を大切にする」という仏法の精神について論じられていますが、冷戦時代にソ連を初訪問し緊張緩和の道を開くなど、世界に友好の懸け橋を築いてきた池田大作SGI会長の全ての平和行動は、この精神を「応用の勇気」をもって現実に示したものにほかならないと思います。

また提言では、「歩んできた道が異なる人間同士が向き合うからこそ、一人では見ることのできなかった新しい地平が開け、人格と人格との共鳴の中でしか奏でることのできない創造性も育まれる」と、対話の意義が強調されています。

こうした豊かな創造性は、さまざまな背景を持った学生たちが集まる大学のような教育の場においても、大きく発揮されるものであると確信します。

「世界市民」を目指す学生たちと共に学びながら、社会が直面する課題を解決するための行動を起こしていきたいと思います。

(聖教新聞2016年3月2日付掲載)