大乗仏教では、自他共の幸福を目指す生き方を「菩薩」と名付け、維摩経には、その精神を象徴する言葉が記されています。
「疾病の(多い)中劫にあっては、彼は良質の薬となり、それによって人々は解脱し、諸病もなく幸福になる。
飢饉の(多い)中劫にあっては、食物や飲み物となり、飢えと渇きとを除いて、人々に法を説く。
武器の中劫にあっては、彼らは慈愛心を修め、多くの衆生、幾百幾万の衆生を、憎悪のないところへおちつける」(長尾雅人訳、『大乗仏典7 維摩経・首楞厳三昧経』所収、中央公論新社)と。
「四苦」と呼ばれる生老病死の悩みを抱える人々への励ましはもとより、社会で深刻な問題が起きた時、「一切衆生の病を以て是の故に我病む」との維摩経の文のごとく、脅威が自分に及んでいようといまいと、同苦の心で、今いる場所から行動を起こしていく。
その行動は、維摩経の「無尽燈」の法門のように、目の前の一人を希望の光で照らすだけでなく、尽きることのない輝きをもって周囲や社会をも明るく照らし出していくと、仏教は説きます。
私どもSGIが、国連の活動を支援し、地球的問題群の解決を目指す行動を続けてきた基底にあるのも、この「菩薩」の精神にほかなりません。
これまで難民救援活動の支援や、災害時の復興支援などにも取り組んできましたが、活動の柱として最も重視してきたのは、「民衆の民衆による民衆のためのエンパワーメント(内発的な力の開花)」です。
エンパワーメントが引き出す内発的な力こそが、「無尽燈」のように、尽きることのない変革のエネルギーとなり、希望の光明になると信じるからです。