2017年のSGI提言

米ロ首脳会談を早期に開催し緊張緩和と核軍縮の流れを

第10段
米ロ首脳会談を早期に開催し緊張緩和と核軍縮の流れを

続いて、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」が目指す〝平和で公正かつ包摂的な社会〟の実現に向け、①核兵器の禁止と廃絶、②難民問題への対応、③「人権文化」の建設、の三つの課題について具体的な提案を行いたい。

第一のテーマは、核兵器の禁止と廃絶です。

先月、国連総会で歴史的な決議が採択されました。核兵器禁止条約を交渉する会議の開催が決定したのです。

3月末と、6月中旬から7月にかけて国連で討議を行い、早期締結に向けて最善を尽くすことが呼び掛けられています。

いまだ世界には、1万5000発以上の核弾頭が存在しています。核軍縮の停滞に加え、核戦力を強化する近代化計画も進み、脅威の解消どころか、脅威を増幅しかねない方向に向かいつつあります。

かつてアメリカのケネディ大統領が、古代ギリシャの〝ダモクレスの剣〟の故事を通して警告した、人類と地球の生態系が常に壊滅の危機にさらされる事態は、決して過去の話ではありません。

むしろ、国連総会での決議で強調しているように、核問題の解決は「いっそう緊急のものとなっている」のです。

世界で今も続く高度警戒態勢

そこで私は、いくつか提案をしたい。

一つ目は、アメリカとロシアの首脳会談をできるだけ早く開催し、核軍縮の機運を再び高めることです。

両国の指導者には、地球上の人々の生命を脅かし、人類がこれまで築いてきた文明を灰燼に帰しかねないほどの大量の核兵器を保有している責任が、重くのしかかっているからです。

3年前にウクライナ情勢を巡って緊張状態に陥って以来、両国の関係は〝新冷戦〟といわれるほど厳しく冷え込みました。

核軍縮交渉も、2011年に新戦略兵器削減条約(新START)が発効したのを最後に進んでおらず、この条約が削減の達成期限としている来年以降の先行きは、不透明なままになっています。

今月20日に就任したアメリカのトランプ新大統領は、当選決定後にロシアのプーチン大統領と行った電話会談で、両国の関係改善を目指すことで意見の一致をみています。世界の核兵器の9割以上を保有する両国が緊張緩和を図り、核兵器の問題についてもしんに話し合うことを、私は強く願ってやみません。

冷戦終結から四半世紀が経つ今もなお、核抑止政策が続く中で、世界では約1800発もの核兵器が、即座に発射できる「高度警戒態勢」に置かれています。

その状態は一体、何を意味するのか――。

ウィリアム・ペリー元米国防長官は、カーター政権下で国防次官を務めていた頃(1977年)、真夜中に戦略空軍の当直将校から「ソ連のミサイル200発がアメリカに向けて飛来中」との緊急電話を受けた時の衝撃が忘れられないと述懐しています。

すぐに誤作動が原因とわかったものの、それが正しい情報であれば、核兵器で即座に反撃するかどうか、究極の判断が大統領に迫られる事態だったからです。

核戦争など決して望んでいなくても、他国からの核攻撃を阻むには、〝いつでも応酬する準備がある〟との意思を示す必要がある。しかし、それが言葉だけではないことを証明するには、即座に発射できる態勢を維持せねばならず、片時も安心できないばかりか、結果的に、核戦争の危機を常に背負い込む状態から逃れることができない――。

実のところ、それが冷戦時代から現在まで続く、核抑止の実態なのです。