2017年のSGI提言

日本による交渉参加の呼び掛けで核兵器禁止条約の道開け!

第12段
日本による交渉参加の呼び掛けで核兵器禁止条約の道開け!

広島と長崎の強い願いを共有

続く二つ目の提案は、唯一の戦争被爆国である日本が、その歴史的な使命と責任を深く自覚し、核保有国や他の核依存国を含めた多くの国々に、国連の交渉会議への参加を粘り強く働きかけることです。

近年、被爆地での外交会議の開催や、各国の要人の被爆地への訪問が相次ぐ中、核兵器の問題に関する重要なメッセージが繰り返し発信されてきました。

2014年4月、広島で行われた軍縮・不拡散イニシアチブの会合では、核依存国のオーストラリア、ドイツ、オランダなどの外相が被爆者の体験に耳を傾ける機会も設けられる中、核兵器の非人道的影響に関する議論は「核兵器のない世界という目標に向けた国際社会の結束した行動のための触媒であるべき」との宣言が発表されました。

また昨年4月には、広島でG7(主要7カ国)外相会合が開催されました。アメリカ、イギリス、フランスの核保有国と、ドイツ、イタリア、カナダ、日本の核依存国の外相らがそろって原爆ドームに足を運び、「核兵器は二度と使われてはならないという広島及び長崎の人々の心からの強い願いを共にしている」との宣言を採択しました。

そして昨年5月には、オバマ大統領が、現職の米大統領として初めて広島訪問を果たし、「私の国のように核を保有する国々は、恐怖の論理にとらわれず、核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければなりません」(朝日新聞取材班『ヒロシマに来た大統領』筑摩書房)と、演説を行ったのです。

私は、被爆地で議論を共に重ねてきた国々をはじめ、できるだけ多くの国々に、日本が核兵器禁止条約の交渉会議への参加を呼び掛けるよう訴えたい。

2年前の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、核保有国と非保有国との溝が埋まらず、最終文書の採択が見送られたように、今回の交渉会議も難航が予想されます。

しかし、NPTの重要性と、核兵器がもたらす壊滅的な結末への懸念は、どの国にも基本的に共有されたものであるはずです。

私は、その共通認識を足場に、核兵器を巡る議論の再構築を行うことが肝要ではないかと考えます。

この点、温暖化防止対策の転換点となったパリ協定の交渉の教訓は、重要な示唆を与えるものです。

パリ協定の交渉では、温暖化の原因や対応に関する責任論に終始するのではなく、どの国にとっても望ましい未来像となる「低炭素社会」のビジョンを掲げて、共にその実現を目指すことに照準を合わせる努力が行われました。そうした中で、合意への突破口が開かれたのです。

核兵器の問題についても同様に、生産や移転、威嚇や使用などを規制する条約づくりを、どの国にも核兵器による惨劇を絶対に引き起こさないための〝地球的な共同作業〟と位置づけ、そのビジョンに基づく歩み寄りをしんに模索すべきではないでしょうか。

NPTの討議と連動性の確保を

NPTは、前文にある通り、核戦争は全人類に惨害をもたらすとの認識に立って、「諸国民の安全を守る措置」の必要性に基づき、制定されたものです。

この本旨に照らせば、交渉会議で討議される核兵器禁止条約と、立脚点に違いはありません。

核兵器禁止条約はNPTに取って代わるものではなく、完全な核軍縮に向けて誠実に交渉を行うことを定めたNPT第6条を具体化し、NPTの強化につながるものなのです。

その意味で大切なのは、それぞれの国が抱えている〝安全保障上の懸念や防衛上の課題〟と、〝核兵器のない世界を実現するための方途〟が交差する点はどこにあるのかを、より多くの国の参加による議論を通じて浮かび上がらせていくことだと思います。

5月には、2020年のNPT再検討会議に向けた第1回準備委員会が、ウィーンで開催されます。

準備委員会でNPT第6条の核軍縮義務に焦点を合わせた討議を行う中で、互いの国が抱える安全保障上の懸念に向き合い、懸念を共に取り除くにはどんな行動が必要となるのかについて意見を交換していく。

その上で、6月以降の核兵器禁止条約の交渉会議での議論につなげていくことが、どの国にとっても有益ではないでしょうか。

NPTの討議との連動性を確保し、立場が異なる国の間の溝を埋める努力を重ねてこそ、禁止条約の交渉は建設的なものになるに違いないと思うのです。

核兵器の問題は、国連創設当時から70年来の重要課題であり、いよいよ始まる禁止条約の交渉もかなりの困難が予想されます。

しかし、こうしたしんな対話を粘り強く続けていけば、「核兵器のない世界」への流れを後戻りできない確かなものへと押し上げていくことができると、私は信じてやみません。

交渉会議の後には、来年までに国連で「核軍縮に関するハイレベル会合」を開催することも決まっています。

核兵器禁止条約を何としても締結に導き、大幅な核軍縮、さらには核廃絶へのプロセスを始動させる機運を高めていくべきではないでしょうか。