2017年のSGI提言

市民社会の力強い声を「核なき世界」の礎石に

第13段
市民社会の力強い声を「核なき世界」の礎石に

集団の論理を離れ人間の思いに立脚

次に、三つ目の提案として述べたいのは、交渉会議に向けて市民社会で多くの声明を出し合い、それらを「核なき世界の民衆宣言」として核兵器禁止条約の礎石にしていくことです。

市民社会の役割――それは、国境を超えて全ての人々に深く関わる性質を持ちながらも、国家単位の政策議論にとどまりがちな課題に対し、その議論を〝人間化〟して問題の所在を浮き彫りにし、グローバルな行動の連帯を力強く形づくることにあります。

核兵器の問題では、1955年7月に科学者らが発表した「ラッセル=アインシュタイン宣言」が、その嚆矢でした。

「私たちは、一つの集団に対し、他の集団に対するよりも強く訴えるような言葉は、一言も使わないようにこころがけよう」

「私たちは、人類として、人類にむかって訴える――あなたがたの人間性を心にとどめ、そしてその他のことを忘れよ、と」(久野収編『核の傘に覆われた世界』平凡社)

この一節が象徴するように、宣言を貫くのは国家や民族などの〝集団の論理〟ではなく、〝人間としての思い〟でした。

ゆえに、核兵器を国ごとの問題とするのではなく、「自分自身や子どもや孫たち」に直接関わる問題として提起したのです。

1996年7月に国際司法裁判所で、核兵器のかくと使用に関する勧告的意見が示されたのも、「世界法廷プロジェクト」のような市民社会の強い働きかけがあったからでした。

審理にあたり、40の言語、約400万人による「市民の良心宣言」が提出される中、核兵器の威嚇と使用は国際法に一般的に違反するとした上で、全ての面での核軍縮を導く交渉を誠実に行い、完結させる義務があると明記した勧告的意見が示されたのです。

時を経て、核兵器禁止条約の交渉会議の開催が決定した今、会議を力強く支持する市民社会の声を届け、禁止条約を〝民衆の主導による国際法〟として確立する流れをつくり出すべきではないでしょうか。

人類に意味と活力を与える力

今回の国連での交渉会議は、核問題の解決を求める国々の外交努力もさることながら、広島と長崎の被爆者をはじめとする世界のヒバクシャ、科学者や医師、法律家や教育者、また宗教者など、さまざまな分野の人々と団体が行動を積み重ねる中で、実現への道が開かれたものでした。

こうした人々や団体の思いを、それぞれ声明にし、会議に寄せる形で「核なき世界の民衆宣言」の裾野を広げる。また、核兵器禁止条約の意義を草の根レベルで語り合う機会を設け、賛同の輪を拡大する――。

その行動の一つ一つが、国連決議が呼び掛ける「市民社会代表の参加と貢献」につながり、禁止条約の礎石になると思うのです。

核保有国や核依存国を含め、各国の民衆の間で、核兵器のない世界を求める声が根強い状況を目に見える形で示すことは、禁止条約の実効性と普遍性を高める〝かけがえのない支え〟になるに違いありません。

そうした民衆の声は、決して少なくないはずです。

例えば、核廃絶を求める「平和首長会議」に加盟する都市は、162カ国・地域、7200以上に及び、核保有国や核依存国の都市も多く含まれています。

かつて広島市に自らの彫刻を寄贈した人権活動家のエスキベル博士が、平和とは「人類に意味と活力を与える力」であらねばならないと、強調していたことを思い起こします(『人権の世紀へのメッセージ』東洋哲学研究所)。

果たして、核兵器に依存しなければ維持できないといった安全保障に、その力が宿っているといえるでしょうか。

「人類に意味と活力を与える力」は、〝あらゆる差異を超えて生命の尊厳を共に守り合う世界を築く〟という民衆の誓いが生み出す平和にこそ、力強く脈打つと確信するのです。

私どもSGIは、戸田第2代会長の「原水爆禁止宣言」を原点に平和運動を進める中、2007年から「核兵器廃絶への民衆行動の10年」と題する活動を展開してきました。

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と共同制作した「核兵器なき世界への連帯――勇気と希望の選択」展を各国で開催してきたほか、核軍縮の誠実な履行を求める運動「ニュークリア・ゼロ」に賛同し、2014年に500万を超える署名を集めました。

また、昨年の核軍縮に関する国連公開作業部会に寄せた「核兵器の非人道性を憂慮する宗教コミュニティー」の共同声明の作成に協力するとともに、国連総会第一委員会にも、同コミュニティーとしての共同声明を提出しました。

2015年8月には、他の団体と協力して「核兵器廃絶のための世界青年サミット」を広島で開催し、それを機に、核廃絶を求める世界の青年の国際ネットワーク「アンプリファイ」が昨年発足しています。

そして今年は「原水爆禁止宣言」60周年を記念し、宣言発表の地・神奈川で「青年不戦サミット」を行うことになっています。

こうした10年にわたる一連の取り組みを支えてきた思いは、SGIが国連公開作業部会に提出し、国連文書となった作業文書の次の言葉に凝縮しています。

「核兵器は、人間生命を無意味なものとし、希望をもって未来に目を向けるという、私たちの能力の発揮を妨げている」

「核兵器の根源的な問題は、他者を徹底的に否定するところにある。それは、人間性の否定であり、平等であるはずの幸福への権利や、生命への権利の否定でもある」

「核軍縮への挑戦は、核保有国だけでなく、全ての国家を含みつつ、市民社会の十分な関与を得た上での、地球的な共同作業でなければならない」

3月から国連で始まる交渉会議を「地球的な共同作業」を生み出す場とするために、他の団体と協力し、市民社会の声の結集に全力で取り組むことを固く決意するものです。