青年の視点2017年のSGI提言

大阪体育大学准教授 曽根純也(青年学術者会議)

大阪体育大学准教授 曽根純也(青年学術者会議)

2015年8月、「それでも僕は帰る」と題する映画が日本で公開されました。

中東シリアでサッカーのユース代表だったバセット選手が、民主化を求めてリーダーとなり、平和的なデモを開始するが、それに対して政府軍が攻撃し、170人もの市民の命を奪う。この事件を発端に、バセット青年と仲間たちが、武器を持って戦闘に身を投じていくというドキュメンタリーです。

こうした負の連鎖をどう断ち切ればよいのか。

かつて池田大作先生は、平和学者のヨハン・ガルトゥング博士との対談の中で、軍事力に対するものとして非暴力主義を提起し、その思考方法は〝敵と味方〟や〝善と悪〟とを安易に区別し差別するのではなく、普遍的価値に根差した対話によるものでなければならないと指摘しました。

私は、昨年3月、サッカーのワールドカップ予選のために来日したシリア代表選手団と、友人であるイブラヒム前監督に羽田空港で再会しました。再会をひとしきり喜び合った後、記者会見でイブラヒム前監督が、「私たちはシリアの国民を幸せにさせたい。それこそがモチベーションとなっている」と述べていたのが胸に残りました。

今回の提言では、「一対一の友情を通し、互いの存在のかけがえのなさを心の底から感じた時に、民族や宗教といった差異も、友の姿によって照らし出された多様性の輝きに包まれていくのではないでしょうか」とあります。

私も、シリアの人たちと友情を深めることが、世界に広がる負の連鎖を断ち切るための行動になっていくと自覚するものです。

また提言で言及されているように、昨年、オリンピック・パラリンピック史上初の「難民選手団」の雄姿が世界に発信されました。

その中で、シリア出身は、水泳のユスラ・マルディニ選手と、下腿部を失ったイブラヒム・フセイン選手でした。フセイン選手は、戦闘に巻き込まれた友人を助けようとした際に、ロケット弾が命中して、ふくらはぎの下半部を失ってしまったのです。

そのような苦悩を背負った難民選手団が出場したオリンピック・パラリンピックは、戦争による悲惨な経験を全世界に知らしめる強いメッセージとなり、「人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の確立を奨励することにある」とのオリンピック憲章を再確認しつつ、悲惨な現実を共有するものとなりました。

池田大作先生は、国連の支援でシリア紛争の和平実現をと呼び掛けられています。

私も、私でしか紡ぐことのできないシリアの人々との友情を今後も育み続けていきたいと決意するものです。