青年の視点2017年のSGI提言

創価大学教授 大塚望(青年学術者会議)

創価大学教授 大塚望(青年学術者会議)

私は以前、日本語教師として、多くの留学生と一緒に過ごしていたことがあります。

日本語教育の現場は、多様な文化や言語を持つ人々が集まり、日本語の習得を目指して共に切磋琢磨する場です。しかし、時として、歴史認識やその時々の社会情勢や事件によって、その場が言い争いの場になってしまうこともありました。まさに、小さな〝世界〟が教室内にあったのです。

教師として、それが差別や暴言にならないよう注視してきましたが、考え方の違いがあっても、それが大きな問題にならなかったのは、やはり彼らが「仲間」であり、「友人」だったからだと思います。留学生一人一人が、互いに顔を知る具体的な人間だからです。

現在は、日本語教師を目指す学生のための授業を担当しており、その中には、半数が留学生、半数が日本人学生という授業もあります。彼らが一歩教室を出れば、日本と中国、また日本と韓国との間で政治的な摩擦や確執が生じている状況があります。

しかし、深刻な確執があるのは国と国の間であり、学生たちにとって、同じ授業を受けている「キムさん」や「ソンさん」は、一人の大切な友人にほかなりません。

個人のレベルにはそのような確執はなく、例えば、キムさんが骨折した時には、皆が心を痛め、慰めの言葉をかけ、肩を貸して一緒に歩いていく……。まさに池田大作先生の提言の中で、「世界は、単なる国の集まりでもなければ、宗教や文明だけで構成されているものでもありません」と述べ、「一対一の友情を通し、互いの存在のかけがえのなさを心の底から感じた時に、民族や宗教といった差異も、友の姿によって照らし出された多様性の輝きに包まれていくのではないでしょうか」と言われた事実が、このクラスの中にあると、私は感じるのです。

また、そうした友情は〝羅針盤〟となり、〝映し鏡〟となって、暴力の連鎖を断ち切る力となると、提言で強調されていることに、私は実感を持って賛同するものです。

彼らのような若い人々が友好を深めることによって、「不戦の世代」をグローバルに築き上げていけるよう、日本語教育に携わる大学人として努力していきたいと思います。それが、池田先生が提言で述べられている、「今いる場所で一隅を照らす存在になろう」とすることではないかと考えます。

そして、大学の持つべき「社会の〝希望と安心の港〟としての力」を示せるよう、「青年の数だけ希望があり未来がある」と信じ、学生に真心を込めて接していきたいというのが、私の決意です。