青年の視点2017年のSGI提言

独立行政法人専門員 青野健作(青年学術者会議)

独立行政法人専門員 青野健作(青年学術者会議)

今回の提言で、核兵器禁止条約の締結が呼び掛けられている箇所で「民衆の主導による国際法」に言及されていることに深い感銘を受けました。

かつて池田大作先生は、2006年の国連提言で、「国益や主張のぶつかり合いで、どれだけ厳しい対立の構図に陥ったとしても、各国が『対話』という軸足を動かすことなく、人類共闘の地歩を一歩ずつでも固めていくしかない」と、国連に最大の期待を寄せました。

こうした各国の立場を調整しながら形成された国際法の中に、国際経済法という急速に発展してきた分野があります。

1948年に発足したGATT(関税及び貿易に関する一般協定)に代表され、その後、WTO(世界貿易機関)でも導入されてきた「自由貿易」という概念と、その国の領域内では当該国の法律の適用を受けるべきとする「属地主義」の中で、経済連携協定をはじめとする国際経済法は、ある種の混沌とした広がりをみせてきました。

各国とも、守るべきものは守りつつ、「自由貿易」と「属地主義」のバランスを図っているのが現実です。政策を決める各国政府は、多くの国内調整と政府間交渉を繰り返し、非常に長いプロセスを経て国際ルールを構築します。

しかし、イギリスのEU(欧州連合)離脱や、アメリカのトランプ政権によるTPP(環太平洋連携協定)の離脱表明に象徴されるように、政策は時代に応じて流動的なものであり、長い交渉を経た国際ルールでも、時流によって状況が大きく変化する事実を、私たちは目の当たりにしています。

その中で池田先生は、核兵器禁止条約を「民衆の主導による国際法」として確立する流れをつくる必要性を強調するとともに、「集団の論理」ではなく「人間としての思い」が大切であると訴えています。

政府間の交渉を通じて核兵器禁止条約を締結に導くことは、かなりの困難を伴うと思います。

しかし、だからこそ、提言で紹介されている通り、1996年の国際司法裁判所での勧告的意見の際に寄せられた約400万人による「市民の良心宣言」のような〝民衆主導〟の取り組みが重要になってくるのではないでしょうか。なぜなら、確固たる哲学に裏打ちされた民衆の声は、時流に流されないからです。

私は、ヨーロッパでの在外研究を経て、経済交渉の最前線に身を置き、その後、国際取引などの現場をサポートする仕事に従事してきました。目まぐるしい時流の変化があるからこそ、目の前の一人を大切にする心が大事になると、改めて強く感じています。