2018年のSGI提言

誰の身にも悲惨事を起こさせない

第5段
誰の身にも悲惨事を起こさせない

一人一人の生命と尊厳を守り抜く

このように、二人の先師にとって世界平和の追求は、国家間の緊張解消や戦争の防止にとどまらず、民衆一人一人の生命と尊厳を守り抜くことに主眼がありました。

SGIが核兵器禁止条約の制定を目指す中で、「生命の権利」を守る人権アプローチを重視してきたのは、牧口会長と戸田会長の精神を受け継いだものだったのです。

その意味でも、禁止条約が軍縮に関するものでありながら、国際人権法の精神を宿していることに深い意義を感じてなりません。

条約の最大の特色は、核兵器を禁止する理由として「すべての人類の安全」への危険性を挙げ、被害を受ける〝人間〟の観点を条約の基礎に据えていることにあります。また、条約に関わる主体として、国家だけでなく、市民社会の役割の重要性を明確に位置付けていることです。

歴史を振り返れば、国際社会における個人の存在を、同情の対象ではなく権利の主体として位置付けるきっかけとなったのは、「われら人民」の言葉で始まる国連憲章であり、「すべての人」という主語を掲げる条文などで構成された世界人権宣言でした。

核兵器禁止条約でも、自らの被爆体験を通して核兵器の非人道性を訴え続けてきた行動の重みをとどめるべく、「被爆者」の文字が前文に刻まれています。

禁止条約の交渉会議で、市民社会の代表が座っていた席は議場の後方でした。

しかし、ある国の代表が、市民社会は〝尊敬の最前列〟にあったと語ったように、禁止条約を成立させる原動力となったのは、広島と長崎の被爆者や核被害を受けた世界のヒバクシャをはじめ、心を同じくして行動を続けてきた市民社会の声だったのです。

SGIもその連帯に連なり、ICANとの共同制作による展示を通した核兵器の非人道性に関する意識啓発や、国連への作業文書の提出などを通して、核兵器禁止条約の制定プロセスに深く関わってこられたことは、大きな喜びとするところであります。

平和や人権といっても、一足飛びに実現できるものは何一つありません。

〝自らが体験した悲惨な出来事を誰の身にも起こさせない〟との誓いが平和と人権を守る精神的な法源となり、市民社会の間で行動の輪が大きく広がる中でこそ、一人一人の生命と尊厳を守る法律や制度の基盤は固められていくのではないでしょうか。