2018年のSGI提言

条約参加に向けた検討を進め 日本は政策転換の先頭に!

第12段
条約参加に向けた検討を進め 日本は政策転換の先頭に!

立場を超えて建設的な議論を

本年4月から5月にかけてNPT再検討会議の準備委員会が行われ、核軍縮に関する国連ハイレベル会合が5月に開催されます。

核兵器禁止条約の採択後、核保有国や核依存国も交えての初の討議の場となるものであり、「核兵器のない世界」に向けた建設的な議論が行われるよう、強く呼び掛けたい。

その場を通して、2020年のNPT再検討会議に向けて各国が果たすことのできる核軍縮努力について方針を述べるとともに、核兵器禁止条約の7項目にわたる禁止内容について、実施が今後検討できる項目を表明することが望ましいと考えます。

例えば、「移譲の禁止」や「新たな核保有につながる援助の禁止」は、NPTとの関連で核保有国の間でも同意できるはずです。

また核依存国にとっても、「核兵器の使用と()(かく)の禁止」や、そうした行動につながる「援助・奨励・勧誘の禁止」が、自国の安全保障政策にどう関係してくるのかを検討することは可能だと思います。

国際法は、条約のような〝ハード・ロー〟と、国連総会の決議や国際的な宣言などの〝ソフト・ロー〟が積み重ねられ、補完し合う中で実効性を高めてきました。軍縮の分野でも、包括的核実験禁止条約(CTBT)において、条約に批准していない場合に個別に取り決めを設けて、国際監視制度に協力する道が開かれてきた事例があります。

核兵器禁止条約においても、署名や批准の拡大を図る努力に加えて、こうした〝ハード・ロー〟と〝ソフト・ロー〟の組み合わせのように、署名や批准が当面困難な場合であっても、宣言や声明という形を通じて各国が実施できる項目からコミットメント(約束)を積み上げていくべきではないでしょうか。

何より核兵器禁止条約は、NPTと無縁なところから生まれたものではありません。条約採択の勢いを加速させた核兵器の非人道性に対する認識は、2010年のNPT再検討会議で核保有国や核依存国を含む締約国の総意として示されていたものに他ならず、核兵器禁止条約は、NPT第6条が定めた核軍縮義務を具体化し、その誠実な履行を図っていく意義も有しているからです。

広島と長崎の被爆者の思い

私が創立した戸田記念国際平和研究所では、昨年11月、協調的安全保障をテーマにした国際会議をロンドンで開催しました。

会議では、停滞が続く核軍縮を前に進めるための課題を検討するとともに、NPTと核兵器禁止条約の二つの枠組みが補完し合う点について討議しました。

また来月には東京で国際会議を行い、日本や韓国、アメリカや中国から専門家が参加し、北朝鮮情勢や北東アジアの平和と安全保障を巡って打開策を探ることになっています。

核軍縮の停滞に加え、核兵器の近代化が進み、拡散防止の面でも深刻な課題を抱える今、「NPTの基盤強化」と「核兵器禁止条約による規範の明確化」という二つのアプローチの相乗効果で、核兵器による惨劇を絶対に起こさせない軌道を敷くべきではないでしょうか。

その意味で、唯一の戦争被爆国である日本が、次回のNPT再検討会議に向けて核軍縮の機運を高める旗振り役になるとともに、ハイレベル会合を機に核依存国の先頭に立つ形で、核兵器禁止条約への参加を検討する意思表明を行うことを強く望むものです。

先のパウエル氏の言葉に()(えん)して言えば、〝1945年8月の後、核兵器が使用されるかもしれない事態が生じた時、それを容認する国に連なることができるのか〟という道義的責任から目を背けることは、被爆国として決してできないはずだからです。

禁止条約の基底には、どの国も核攻撃の対象にしてはならず、どの国も核攻撃に踏み切らせてはならないとの、広島と長崎の被爆者の切なる思いが脈打っています。被爆者のサーロー節子さんも、「思い出したくない過去を語り続ける努力は、間違いでも無駄でもなかった」(「中国新聞」2017年11月25日付)との感慨を述べていました。

日本は昨年、次回のNPT再検討会議に向けた第1回準備委員会で、「非人道性への認識は、核兵器のない世界に向けての全てのアプローチを下支えするもの」と強調しましたが、日本の足場は〝同じ苦しみを誰にも味わわせてはならない〟との被爆者の思いに置かねばならないと訴えたいのです。