2018年のSGI提言

核廃絶の前進を求める 新たな「民衆行動の10年」

第13段
核廃絶の前進を求める 新たな「民衆行動の10年」

平和・軍縮教育を市民社会で推進

核兵器禁止条約に関し、もう一つ呼び掛けたいのは、市民社会の連帯を原動力に条約の普遍性を高めていくことです。

核兵器禁止条約の意義は、一切の例外なく核兵器を禁止したことにありますが、その上で特筆すべきは、条約の実施を支える主体として国家や国際機関だけでなく、市民社会の参画を制度的に組み込んでいる点です。

条約では、2年ごとの締約国会合や6年ごとに行う検討会合に、条約に加わっていない国などと併せて、NGO(非政府組織)にもオブザーバー参加を招請するよう規定されています。

これは、世界のヒバクシャをはじめ、条約の採択に果たした市民社会の役割の大きさを踏まえたものですが、同時に、核兵器の禁止と廃絶は、すべての国々と国際機関と市民社会の参画が欠かせない〝全地球的な共同作業〟であることを示した証左といえましょう。

また条約の前文では、平和・軍縮教育の重要性が強調されています。

この点は、私どもSGIが、国連での交渉会議に提出した作業文書や、交渉会議における市民社会の意見表明の中で繰り返し訴えてきたものでもありました。

核兵器の使用が引き起こす壊滅的な人道上の結末に関する知識が、世代から世代へと継承され、維持されるためには、平和・軍縮教育が不可欠であり、それが禁止条約の積極的な履行を各国に促す土台ともなると考えるからです。

そこでSGIとして、核兵器禁止条約の早期発効と普遍化の促進を目指し、「核兵器廃絶への民衆行動の10年」の第2期を本年から新たに開始することを、ここに表明したい。

昨年までSGIは、「核兵器廃絶への民衆行動の10年」のキャンペーンを進めてきました。

これは、私が2006年8月に発表した国連提言での呼び掛けを踏まえ、戸田第2代会長の「原水爆禁止宣言」発表50周年を機に、2007年9月に開始したものです。

ICANと協力して「平和への願いをこめて――広島・長崎 女性たちの被爆体験」と題するDVD(5言語版)を制作し、証言映像で核兵器と戦争の悲惨さを訴えてきたほか、先に紹介した「核兵器なき世界への連帯」展を19カ国81都市で開催してきました。

また、2010年のNPT再検討会議に寄せて核兵器禁止条約の制定を求める227万人の署名を提出したのに続き、2014年には核兵器廃絶のキャンペーンに協力し、512万人を超える署名を集めました。

そのほか、多くの団体と連携して「核兵器廃絶のための世界青年サミット」を2015年に広島で開催するとともに、核兵器の人道的影響に関する国際会議や、国連での核兵器を巡る一連の討議と交渉会議に参加し、市民社会の声を届けてきたのであります。

このような活動を通し、核兵器の非人道性を議論の中軸に据える後押しをしながら、核兵器禁止条約の交渉を求め、「核兵器のない世界」を求める多くの民衆の思いに立脚した、いかなる例外も認めない全面禁止を定めた条約の制定を訴え続けてきました。

「非核」の民意を世界地図で表す

これまでの「民衆行動の10年」の最大の焦点は、核兵器禁止条約の制定にありました。

本年から開始する「民衆行動の10年」の第2期では、平和・軍縮教育の推進にさらに力を入れながら、核兵器禁止条約の普遍化を促し、禁止条約を基盤に世界のあり方を大きく変えていくこと――具体的には、禁止条約を支持するグローバルな民衆の声を結集し、核兵器廃絶のプロセスを前に進めることを目指したいと思います。

平和首長会議への加盟が162カ国・地域の7500以上の都市に達しているように、「核兵器のない世界」を求める声は、核保有国や核依存国の間でも広がっています。

またICANの活動に賛同するNGOも、世界で468団体に及んでいます。

私は、核兵器禁止条約の普遍性を高めるには、各国の条約参加の拡大を市民社会が後押しするとともに、グローバルな規模での市民社会の支持の広がりを目に見える形で示し続けることが、大きな意義を持つと考えます。

例えば、ICANや平和首長会議など多くの団体と協力する形で、核兵器禁止条約を支持する各国の自治体の所在地を国連のシンボルカラーである〝青〟の点で示した世界地図を制作したり、さまざまなNGOから寄せられた条約支持の声を集めて幅広く紹介し、国連や軍縮関連の会議の場で継続的に発信していく方法もあると思います。

また青年や女性、科学界や宗教界など、あらゆる角度から連帯の裾野を広げ、各国の条約参加を呼び掛けるとともに、条約の発効後は、非締約国に締約国会合へのオブザーバー参加を、市民社会として働きかけることも考えられましょう。

先ほど私は、冷戦時代のシミュレーション演習で仮想の地図が赤く染まっていった様子に言及しましたが、〝私たち世界の民衆は、非道な核攻撃の応酬が引き起こされかねない状況を黙って甘受することはできない〟とのグローバルな民意の重さを明確な形で示すことで、世界全体を非核の方向に向けていく挑戦を進めたいのです。

CANへのノーベル平和賞の授賞式で、被爆者のサーロー節子さんは訴えました。

「私は13歳の少女だったときに、くすぶる瓦礫の中に捕らえられながら、押し続け、光に向かって動き続けました。そして生き残りました。今、私たちの光は核兵器禁止条約です」

「どのような障害に直面しようとも、私たちは動き続け、押し続け、この光を分かち合い続けます。この光は、この一つの尊い世界が生き続けるための私たちの情熱であり、誓いなのです」(NHKのウェブサイト)

CANや平和首長会議が築いてきたネットワークを基盤に、市民社会の連帯をさらに広げ、核兵器廃絶を求めるグローバルな民意の大きさを可視化していく――。その民意の重みが、やがては核保有国と核依存国の政策転換を促し、核時代に終止符を打つことにつながっていくと、私は確信してやみません。