2018年のSGI提言

難民と移民の子どもたちの教育機会の確保が急務

第14段
難民と移民の子どもたちの教育機会の確保が急務

国連が採択目指す二つの国際枠組み

次に第二のテーマとして、人権に関する具体的な提案を行いたいと思います。

まず提起したいのは、難民と移民の子どもたちを巡る状況の改善です。

国連では現在、グローバル・コンパクトと呼ばれる難民と移民に関する二つの国際枠組みの年内の採択が目指されています。

私は、このグローバル・コンパクトにおいて、すべての項目を貫く原則として人権を掲げた上で、重点課題の一つとして「子どもたちの教育機会の確保」を各国共通の誓約にすることを、強く呼び掛けたい。

現在、難民や国内避難民などの数は、世界全体で6560万人に達し、難民の半数は子どもたちが占めています。

移民の子どもたちの多くも、移民全体に対する偏見や差別の影響で厳しい状況に置かれています。

特に深刻なのは、保護者から離れて各地を移動する子どもたちの状況であり、ユニセフ(国連児童基金)が昨年発表した報告書によると、2010年以降、その数は約5倍に増加し、80カ国で約30万人に及んでいるといいます。

ユニセフの報告書の題名が「子どもは子ども」となっているように、難民や移民といった境遇の違いに関係なく、すべての子どもの権利と尊厳は等しく守らなければならないというのが、世界人権宣言と子どもの権利条約の根本理念ではないでしょうか。

2年前の「難民と移民に関する国連サミット」で合意されたニューヨーク宣言で言及されていたのも、子どもを取り巻く状況の改善の重要性でした。

宣言では、「子どもの最善の利益に常に主要な考慮を与えつつ、その地位に関わりなく、全ての難民と移民の子どもの人権と基本的自由を保護する」とうたっています。また、具体的な政策課題として、「全ての子どもが、到着から数か月以内に教育を受けることを確実にする」との決意が記されていました(国連広報センターのウェブサイト)。

私は、これを決意に終わらせることなく、難民と移民に関する二つのグローバル・コンパクトで、教育機会の確保を各国が政策に反映することを共に約束した上で、受け入れが少ない国は、受け入れが多い国をさまざまな形で支援する体制を整えるべきではないかと訴えたいのです。

ニューヨーク宣言が強調する通り、教育の機会を得ることは、厳しい状況下にある子どもへの基本的な保護となるだけでなく、若い世代の心に「未来に対する希望」を灯すものになっていくに違いありません。

シリアから逃れた水泳選手の言葉

昨年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使に就任した、シリア出身の水泳選手ユスラ・マルディニさんは語っています(UNHCR駐日事務所のウェブサイト)。

「食べ物によって空腹が満たされ、難民が救われることはあります。しかし、人として生きぬくためには、その心が満たされなければなりません」

彼女は戦場となった母国から逃れ、トルコ経由でギリシャに海路で向かう途中、ボートが故障したため、姉と一緒に海に飛び込み、2人で泳いでボートを数時間押し続けて、同乗していた20人の命を助けました。

その後、たどり着いたドイツで水泳の練習を重ねる中、リオデジャネイロでのオリンピックに難民選手団の一員として出場を果たしたのです。現在は、ドイツで教育を受けながら、2020年の東京オリンピックへの出場を目指し、トレーニングを続けています。

マルディニさんは「難民は過酷な状況を体験した普通の人であり、チャンスさえ得られれば何かを成し遂げることができるというメッセージを今後も広めていきたい」と述べています。

その何よりのチャンスとなるのが教育であると、私は強調したいのです。

また、教育によって灯される「未来に対する希望」が、受け入れ地域の子どもたちの間にも広がり、〝共生の心〟を力強く育む流れへとつながっていくことを期待してやみません。

この点、ICANのフィン事務局長が語っていた言葉が胸に残りました。

「私は移民が多い地域で育ちました。7歳の時に、突然、学校にバルカン諸国の生徒が大勢入ってきたのを覚えています。全員がたいへんな経験をしていました」

「干ばつを逃れて親がソマリアからやってきたという友だちもいました。彼らと出会い、彼らの話を聞き、それを実際に体験した彼らの親に会ったりすることで、外国の紛争や危機が、ある意味身近なものになったのです」

このようにフィン事務局長にとって、母国スウェーデンで世界各地から来た難民や移民の子どもたちと接した経験が、その後、地球的な課題に取り組むNGOの活動に身を投じるきっかけになったというのです。

UNHCRでも、各国の教育制度への受け入れの拡大を呼び掛けていますが、子どもたち同士の関係を通し、家族を含めて地域社会での交流を持続的に深めていくことの意義は大きいのではないでしょうか。

また、学校以外にも、難民の子どもたちに学習機会を提供するノンフォーマル教育の場が重要な役割を担っており、SGIとしても、こうした教育への支援の輪を他団体と協力しながら広げていきたいと考えるものです。