2018年のSGI提言

女性のエンパワーメントで「持続可能な開発目標」を促進

第17段
女性のエンパワーメントで「持続可能な開発目標」を促進

ジェンダー平等が問題解決に不可欠

結びに、SDGsの推進のために言及しておきたいのは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメント(内発的な力の開花)に関する提案です。

このテーマは、SDGsの目標の一つというだけでなく、他のすべての目標を大きく前進させる上で欠かせない〝SDGsの基軸〟となるものです。

国連でこの課題に取り組むUNウィメンのムランボ=ヌクカ事務局長は、昨年10月、国連安全保障理事会での「女性と平和・安全保障」を巡る討論で、次のように強調していました。

「『女性と平和・安全保障』という議題は、グローバルな政策決定においてその足跡を広げ続けており、今や、地球的な問題を語る上で不可欠な柱となっています」

事実、核兵器禁止条約の前文でも、ジェンダー平等が持続可能な平和にとって不可欠の要素であるとし、核軍縮に女性が関与することの支援と強化が呼び掛けられました。

2000年に国連の安保理で採択された「1325号決議」を機に、紛争解決と平和構築のプロセスへの女性の参加拡大が図られてきましたが、各国の安全保障政策の転換につながる軍縮の分野でも、その重要性が明記されたのです。

こうした問題意識の広がりは、平和の分野だけにとどまりません。

例えば、2015年に合意された「仙台防災枠組」では、女性のエンパワーメントに日頃から取り組むことが、災害に対する社会のレジリエンス(困難を乗り越える力)の強化につながると指摘されています。

また、昨年11月にドイツで行われた気候変動枠組条約締約国会議で「ジェンダー行動計画」がまとめられたように、温暖化防止の面でも女性の役割が鍵を握ることが、国際社会の共通認識になっているのです。

そこで私は、こうした時代変革の波動をあらゆる分野で広げていくために、「女性のエンパワーメントの国際10年」を国連で制定することを提唱したい。

具体的には、安保理の「1325号決議」採択20周年を迎える2020年から国際10年をスタートし、SDGsの達成期限である2030年に向けて、女性のエンパワーメントの推進とともに、SDGsのすべての目標の底上げを期すべきではないでしょうか。

女性のエンパワーメントは〝可能であれば考慮する〟といったオプション的なものであってはならず、課題に直面する人々が切実に必要としているものに他なりません。

UNウィメンがヨルダンの難民キャンプで実施した支援で、衣類の仕立ての仕事を始めたシリア難民の女性はこう述べています。

「無力感を感じることが少なくなりました。仕事をすることで、自分たちに価値を見出し、エンパワーされると感じます」(UN Women日本事務所のウェブサイト)

また、タンザニアの難民キャンプに逃れたブルンジの女性は、「何もすることがないキャンプでは、先の見えない将来への不安で頭がいっぱいになります」と沈んでいたものの、起業トレーニングへの参加をきっかけに気持ちが上向きになりました。いつかブルンジに戻り、得意のパン作りの技術で生計を立て、子どもたちを再び学校に送りたいとの夢を語るまでになったのです(UNHCR駐日事務所のウェブサイト)。

このように女性のエンパワーメントは、どれだけ厳しい状況に置かれていても、「生きる希望」を取り戻しながら前に進むための原動力となるものです。

誰も置き去りにしない世界を!

私どもSGIも、〝万人の尊厳〟を掲げる仏法の思想に基づき、女性のエンパワーメントの裾野を広げる活動を続けてきました。

国連の「女性の地位委員会」の取り組みを市民社会の側から支援し、国連本部での会合に代表が参加するとともに、2011年からは、他団体と協力して会合の並行行事を継続的に開催しています。

また、国連人権理事会の会期に合わせて、女性の権利を守るための信仰と文化の役割や、男女平等のためのノンフォーマル教育をテーマにした関連行事を行ってきました。

昨年3月の「女性の地位委員会」では、ジェンダー平等と宗教に関する世界的なプラットフォームが立ち上げられました。その目的は、それぞれの信仰に基づく言説を展開する中で、女性の人権や貢献に対する社会の認識を改善する流れをつくり出し、地域をはじめ、国や国際レベルでのジェンダー平等に関する政策や法律の整備などの規範づくりに影響を与えていくことにあります。

SGIとしても、このプラットフォームの活動に積極的に参加し、他のFBOと力を合わせながら、困難に直面する女性たちの生きる力の源となり、地球的な課題の解決を前に進めるためのアリアドネの糸を、共に紡ぎ出していきたい。そして、市民社会の声を結集し、「女性のエンパワーメントの国際10年」の制定に向けた機運を高めていきたいと思います。

SDGsが掲げる「誰も置き去りにしない」とのビジョンは、世界の半分を占める女性たちの人権を守り、希望と尊厳をもって生きられる社会を築く挑戦の中で、力強く躍動していくに違いありません。

この2030年に向けた挑戦を展望する時、かつてローザ・パークスさんが、心の支えにしてきたものとして紹介してくださった言葉が思い浮かんできます。

「人間は苦しみに甘んじなければならないという法律はないんだよ」との、パークスさんの母君の言葉です。

パークスさんの母君も差別と戦い続けた女性でしたが、この切実な思いこそ、ジェンダー平等を基軸にSDGsの取り組みを前進させるために、あらゆる差異を超えて皆で共有すべき精神ではないでしょうか。

今後もSGIは、一人一人の生命と尊厳を守ることを基盤に、地球的な課題を乗り越えるための民衆の連帯を大河のように広げていきたいと思います。