2019年のSGI提言

民衆の生命と尊厳を脅かす紛争の根を断ち切る

第1段
民衆の生命と尊厳を脅かす紛争の根を断ち切る

世界では今、グローバルな課題が山積する中で、これまで考えられなかったような危機の様相がみられます。

特に顕著なのは気候変動の問題です。世界の平均気温は4年連続で高温となっており、異常気象による被害が相次いでいます。

難民問題も依然として深刻で、紛争などで避難を余儀なくされた人は6850万人にのぼりました。

加えて、暗い影を落としているのが貿易摩擦の問題で、昨年の国連総会の一般討論演説で多くの国の首脳が述べたのも世界経済に及ぼす影響への懸念でした。

これらの課題とともに、国連が早急な対応を呼び掛けているのが軍縮の問題です。アントニオ・グテーレス事務総長は昨年5月、この問題に焦点を当てた包括的文書である「軍縮アジェンダ」を発表しました。

グテーレス事務総長は発表に際し、世界の軍事支出が1兆7000億ドルを超え、〝ベルリンの壁〟崩壊以降で最高額に達したことに触れる一方で、次のような警鐘を鳴らしました。

「各国が他の国の安全保障を顧みず、自らの安全保障だけを追求すれば、すべての国を脅かす地球規模の安全保障上の不安を生み出してしまうという矛盾がうまれます」

その上で強調したのは、軍事支出の総額が世界の人道援助に必要な額の約80倍に達したという点です。

このギャップが広がる中、「貧困に終止符を打ち、健康と教育を促進し、気候変動に対処し、地球を保護するための取り組みに必要な支出がされていません」との深い憂慮を示したのです(国連広報センターのウェブサイト)。

現在の状態が続けば、誰も置き去りにしない地球社会の建設を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みが停滞することにもなりかねません。

軍縮は国連の創設以来の主要課題であり、私自身にとっても、35年以上にわたる毎年の提言で中核をなすテーマとして何度も論じてきた分野であります。

第2次世界大戦の惨禍を体験した世代の一人として、また、地球上から悲惨の二字をなくしたいとの信念で行動を続けた創価学会の戸田城聖第2代会長の精神を継ぐ者として、多くの民衆の生命と尊厳を脅かす紛争の根を断ち切るには、軍縮が絶対に欠かせないと痛感してきたからです。

私たち人間には、いかなる困難も乗り越えることができる連帯の力が具わっています。

不可能と言われ続けてきた核兵器禁止条約も2年前に採択が実現し、発効に向けて各国の批准が進んでいます。

闇が深ければ深いほど暁は近いと、眼前にある危機を〝新しき歴史創造のチャンス〟と受け止めながら、今こそ軍縮の潮流を大きくつくり出していくべきではないでしょうか。

そこで今回は、21世紀の世界の基軸に軍縮を据えるための足場について、①「平和な社会のビジョン」の共有、②「人間中心の多国間主義」の推進、③「青年による関与」の主流化、の三つの角度から論じてみたい。