2019年のSGI提言

日本は批准に向けた努力と 対話の場を確保する貢献を

第11段
日本は批准に向けた努力と 対話の場を確保する貢献を

唯一の戦争被爆国が果たすべき使命

そこで私は、核兵器禁止条約の採択に至るプロセスの中で積み上げられてきた議論を、今後も深化させながら、各国の条約参加の機運を高めていくための有志国のグループを結成することを提案したい。

具体的には、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進のために活動してきた「CTBTフレンズ」と呼ばれるグループにならう形で、「核兵器禁止条約フレンズ」を結成してはどうでしょうか。

CTBTフレンズは、日本とオーストラリアとオランダが2002年に発足させたもので、2年ごとに外相会合を開催し、昨年の第9回会合には約70カ国が参加しました。

特筆すべきは、これまで外相会合に参加した国が核保有国と核依存国と非保有国のすべてにわたっており、署名・批准の有無に関係なく多くの国が討議に加わってきた点です。

この討議が重ねられる中、外相会合への参加後に条約の批准を果たした国もみられます。また、批准後に外相会合に参加して、他の発効要件国に対し、条約への参加を呼び掛ける国も現れています。

このほか、未批准国のアメリカからケリー国務長官(当時)やペリー元国防長官が、外相会合に参加したこともありました。

その際、ペリー氏から、1970年代に〝ソ連がICBM(大陸間弾道弾)を発射した〟との誤情報に惑わされた時の体験が語られるなど、核兵器を巡る教訓が共有される場ともなってきたのです。

こうした経験を生かす形で、核兵器禁止条約においても同様のグループを結成し、条約に対する立場の違いを超えて、対話を継続的に行う場にしていくべきではないでしょうか。

そして、そのグループの活動に日本が加わり、貢献していくことを強く呼び掛けたい。

私は、唯一の戦争被爆国である日本が、核兵器禁止条約を支持し、批准を目指すべきであると訴え続けてきました。

CTBTフレンズの中核を担ってきた日本が、まずは「核兵器禁止条約フレンズ」の結成に協力した上で、自国の条約参加に向けた課題の克服に努めるとともに、他の核依存国にも対話への参加を働きかけることを提案したいのです。

核兵器禁止条約では、発効から1年以内に最初の締約国会合を開催することが定められていますが、私はこの会合に先立つ形で、「核兵器禁止条約フレンズ」を結成するのが望ましいと考えます。

締約国会合を開催する前の段階から、すべての国に開かれた対話の場を設けておくことが、条約を巡る意見の違いの溝を埋めていく上で大きな意味を持つと思うからです。

核保有国と非保有国との〝橋渡し役〟を目指してきた日本は、その対話の場の確保に尽力すべきではないでしょうか。

ICANによる新しい取り組み

核兵器禁止条約の交渉が進む最中に日本が立ち上げを表明し、これまで会合を重ねてきた「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」の提言では、核保有国、核依存国、非保有国の識者による議論を踏まえ、次のような共通認識が示されていました。

「核軍縮をめぐる停滞はとても擁護できるものではない」「国際社会は、立場の違いを狭め、また究極的には無くすため、直ちに行動しなければならない。すべての関係者は、たとえ異なる見方を持っていたとしても、核の危険を減らすために協働することができる」と。

日本がこの共通認識を土台に、核兵器禁止条約の第1回締約国会合のホスト国になることを表明したオーストリアなどの国々に協力し、「核兵器禁止条約フレンズ」の活動を後押しすることを呼び掛けたい。

このグループが、核兵器禁止条約の採択に尽力した赤十字国際委員会やICAN、平和首長会議をはじめとする諸団体と連携しながら、核保有国と非保有国との対話の機会を積極的に設けることが望ましいのではないでしょうか。

市民社会の間でも、核兵器禁止条約の基盤を強化するための新しい取り組みがスタートしています。

昨年11月から始まった「ICANシティーズ・アピール」の活動です。

すでに核保有国の間ではアメリカとイギリスの都市が、また核依存国の間ではカナダ、オーストラリア、スペインの都市が「ICANシティーズ・アピール」に参加しています。

CANはこの活動で、核兵器禁止条約を支持する各国の自治体の連帯を広げることを目指す一方、市民の一人一人が主体となった行動を呼び掛けています。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して、「#ICANSave」というハッシュタグを合言葉にしながら、〝私たちの都市や町の住民は核兵器の脅威がない世界に住む権利を持つ〟との思いを込めたメッセージを発信する取り組みです。

また、世界163カ国の7701都市が加盟する平和首長会議でも、すべての国に核兵器禁止条約の早期締結を呼び掛ける活動が行われています。

私は昨年の提言で、条約を支持する自治体の所在地を示す世界地図を作成することを提案しながら、こう訴えました。

「〝私たち世界の民衆は、非道な核攻撃の応酬が引き起こされかねない状況を黙って甘受することはできない〟とのグローバルな民意の重さを明確な形で示すことで、世界全体を非核の方向に向けていく挑戦を進めたい」

SGIでは、核兵器禁止条約の制定を目指して2017年まで進めた「核兵器廃絶への民衆行動の10年」に続いて、昨年から「民衆行動の10年」の第2期の活動を開始しました。

その主眼は、核兵器禁止条約への支持を広げて「核兵器のない世界」への軌道を確かなものにすることにあり、今後も他の団体と協力しながら、条約に対するグローバルな支持の拡大を力強く後押ししていきたいと思います。