2019年のSGI提言

国連の特別代表を任命し 水資源を守る体制を強化

第15段
国連の特別代表を任命し 水資源を守る体制を強化

世界人口の4割が水の不足に直面

続いて第四の提案として述べたいのは、国連のSDGに関するもので、水資源の保護について具体的な提案を行いたい。

国連のSDGsでは目標の一つとして、すべての人々が安全で安価な水を飲むことができることを掲げています。しかし現在、21億人が安全な水を得ることができずにいるほか、世界の4割の人々が水不足の影響を受けています。

人口増加や経済成長、人々の消費行動の変化により、水の需要は全体的に増える一方で、アジア、アフリカ、中南米の河川では排水による水質の悪化がみられます。また、気候変動によって水循環に影響が生じ、雨が多い地域でさらに雨量が増え、乾燥地はますます乾燥するという現象も起きています。

こうしたグローバルな水危機を乗り越えるために、国連では昨年3月、国際行動の10年「持続可能な開発のための水」(通称「水の国際行動の10年」)を開始しました。

ニューヨークの国連本部での開幕式で、国連総会のマフムード・サイカル副議長が述べた言葉は、世界的な水不足の影響が不平等なものになっている状況を浮き彫りにしていました。

「この建物の中では、喉が渇いたままでいたり、口にする水で自分が病気になるかどうかを心配する人は誰もいないでしょう。そんな基本的なニーズを満たすために、誰も自分の尊厳や安全を危険にさらすことはない。これが私たちの現実です。しかし、世界中の多くの人々にとっては話が別なのです」と。

実際、身近な場所に安全な水を得る環境がないために、6億人以上の人々が整備されていない井戸をはじめ、池や川、湖などから水を汲んで利用する生活を送っています。

そのため、多くの女性や子どもたちが、長時間、重さに耐えながら水を運ぶことを強いられています。

また、不衛生な水のために病気になることも少なくなく、毎年、大勢の子どもたちが命を落としているのです。

その意味で、安全な水の確保は貧困や格差の問題にとどまるものではない。健康上の不安や水運びの負担を日々感じることなく、尊厳をもって生きるという「基本的な人権」に深く関わる問題に他なりません。

生活用水の不足に悩むことなく、安全な水を飲むことのできるありがたさは、突然の災害に見舞われた時に、先進国の人々の間でも強く実感されてきたことではないでしょうか。

水に関する権利は、女子差別撤廃条約や子どもの権利条約などで明記されたほか、2010年の国連総会決議で「生命及びすべての人権の完全な享受のために不可欠な人権」と位置付けられ、国連人権理事会の決議でも重要性が確認されてきたものです。

そこで私は、SDGsの主要な目標であり、人間の生命と生活と尊厳を守る基盤となる安全な水の確保をグローバルな規模で図るために、国連に「水資源担当の特別代表」のポストを設けることを提案したい。

国連には現在、水問題に特化した専門機関はありませんが、UNウオーターという、水問題に関連する30以上の国際機関から構成されるグループがあります。

私は、国連事務総長によって新たに任命された水資源担当の特別代表が、UNウオーターに属する諸機関と力を合わせながら、成功事例の共有をはじめ、技術移転に関するパートナーシップの構築を各国に働きかけていってはどうかと考えるのです。

その具体策の一つとして、水資源担当の特別代表を中心に、「水の国際行動の10年に関する国連会合」を定期的に開催することを、併せて呼び掛けたい。

国連と世界銀行が招集した11カ国の首脳らによる「水に関するハイレベル・パネル」の報告書でも、こうした会議を毎年もしくは隔年で行うことを提唱していました。国連会合の定期開催を通じて、私が前半で論じたような「人間中心の多国間主義」のアプローチを、水資源の分野において定着させることが強く望まれると思うのです。

国連のグテーレス事務総長も、自らがポルトガルの首相を務めた時期に成立したスペインとの水管理の条約をはじめ、インドとパキスタン、ボリビアとペルーの事例を挙げながら、水が「紛争ではなく、協力を促す存在」となってきたことを強調していました。

世界には、286にのぼる国境を接する河川と湖沼流域があるほか、国境をまたぐ帯水層も592を数えます。こうした中、3割近くの越境河川で、流域に面する国々が共同で水資源を管理する枠組みがつくられてきました。

残りの越境河川でも、特別代表とUNウオーターの諸機関が支援する形で同様の枠組みづくりを進め、水の安定的な供給と水質の保護を図るべきではないでしょうか。