2019年のSGI提言

日本が豊かな経験と技術を生かし 水問題を抱える国々を支援

第16段
日本が豊かな経験と技術を生かし 水問題を抱える国々を支援

中東やアフリカで水の再利用を図る

水問題に関してもう一つ提案したいのは、淡水資源が将来的に不足する懸念を踏まえ、「水の再利用」や「海水の淡水化」などの分野で、水問題に関する豊かな経験と技術を持つ日本などの国々が積極的に貢献を果たしていくことです。

日本はこれまで水分野での国際協力として、インフラの整備や人材育成など、多くの国にハードとソフトの両面から包括的な支援を行い、近年は、水と衛生の分野での世界トップの援助国となってきました。

また日本には、水資源の分野における技術交流を、韓国や中国との間で長年にわたって続けてきた実績があります。韓国とは1978年から協力会議を開催し、中国とも85年から交流会議を重ねてきました。

昨年には、日中韓水担当大臣会合も行われ、3カ国が経験の共有などを図り、水問題に関するSDGの目標の達成に向けて協力することを約し合いました。

私は、日本がこうした実績を基盤に、北東アジアにおける水問題の改善と地域の信頼醸成に努めるとともに、韓国や中国とも連携する形で、「水の再利用」や「海水の淡水化」のニーズが高い中東諸国やアフリカ諸国への支援を進めることを提案したいのです。

今年の8月には、第7回アフリカ開発会議が横浜で開催されます。

6年前に行われた第5回会議では、アフリカの約1000万人が安全な水を飲むことができるようにするための支援の継続や、1750人の水道技術者の人材育成を支援することなどが打ち出されました。

今回の会議で、日本がその取り組みの強化と併せて、「水の再利用」や「海水の淡水化」をアフリカ諸国で推進するための基本計画をまとめることを、私は呼び掛けたい。

日本は安全な水に恵まれた国である一方、昨年の世界リスク報告書によると、災害へのさらされやすさが世界で5番目に高いと指摘されています。

災害時に切実に必要とされるのが安全な水であり、日本はそうした面からも、安全な水の確保に苦しんでいる世界の人々を救うために、「人間中心の多国間主義」のリーダーシップを発揮できることがあるのではないでしょうか。

女性の笑顔広げるエンパワーメント

SGIとしても、市民社会の側から「水の国際行動の10年」を支援する一環として、水問題の影響を日常的に強く受けている女性に焦点を当てた、「命を守る水と女性」展(仮称)を、今後開催していきたい。

水道設備が身近にないために、低所得国の女性や少女が1年間に水汲みの作業に費やす時間の合計は約400億時間にも及ぶといわれ、その負担は非常に大きなものになっています。

水汲みのために歩く道には危険な場所も多く、また重い水を毎日運ぶために、体を痛めてしまう女性も少なくありません。安全な水を確保する環境が整えば、そうした問題が改善されるだけでなく、女性が他の仕事に就くことができたり、多くの少女が学校に通えるようになり、女性のエンパワーメント(内発的な力の開花)につながる道が開けてくるのです。

展示では、こうした女性を取り巻く状況とともに、水問題の解決のために行動する女性たちの姿も取り上げていきたいと思います。

国連でジェンダー平等と女性のエンパワーメントに取り組むUNウィメンは、その一つの事例として、タジキスタンのある女性の行動を紹介しています。

彼女は夫を亡くし、5人の子どもを育てながら、川から水を汲むために何時間も歩かねばならない生活を送っていました。

水の問題で悩む村人の多くが〝状況は変わらない〟と絶望する中、彼女は友人とグループを結成して行動を開始しました。複数のNGOからの支援を受け、村人も総動員して14キロに及ぶ水道管を引いた結果、3000人以上の村人たちが安全な水を飲むことができるようになったのです。

彼女は語っています。
「これは私たちの小さな勝利です。自分たちの生活をさらに向上したいと思っています。小規模な農園や温室を作る計画もあります。成功する自信があります」(UNWomen日本事務所のウェブサイト)

こうした女性たちの笑顔の広がりこそが、SDGsの前進を何よりも物語るものになると、私は考えるのです。

国連本部で行われた「水の国際行動の10年」の開幕式で、市民社会の代表として発言したのも13歳の少女でした。

カナダに住む先住民で、水と環境を保護する活動をしてきたオータム・ペルティエさんは、「私たちは、必要な時に水を飲む権利があります。それは、豊かな人だけでなく、すべての人々の権利です」と訴えました。

その上で彼女は、「子どもたちが誰一人として、きれいな水とは何か、水道から流れる水がどんなものかを知らないまま、育つようなことがあってはなりません」と強調し、「今こそ勇気を奮い起こし、地球を守るために、お互いをエンパワーする時です」と呼び掛けました。

SGIとしても、水資源の保護を通じて人間と地球を守る行動の輪を市民社会で広げるために、「命を守る水と女性」をテーマにした展示を行い、水問題の解決を後押ししていきたいと決意するものです。