2019年のSGI提言

SDGsの達成を目指し 世界の大学が協力を促進

第17段
SDGsの達成を目指し 世界の大学が協力を促進

17の目標を担う中心拠点を発表

最後に第五の提案として述べたいのは、世界の大学をSDGの推進拠点にする流れを強めることです。

国連と世界の大学を結ぶ「国連アカデミック・インパクト」が2010年に発足してから、加盟大学は約140カ国、1300校以上に広がっています。

このアカデミック・インパクトが昨年10月、注目すべき発表を行いました。

国連のSDGsの17の目標について、各分野で模範となる活動をしている世界の17大学を選び、ハブ(中心拠点)の役割を担う大学として任命したのです。

例えば、目標2の「飢餓をゼロに」では、南アフリカのプレトリア大学が選ばれました。

プレトリア大学は、食糧問題や栄養に関する研究所を擁し、アフリカ諸国や国際機関と協力して研究を進めてきたほか、食糧安全保障をテーマにした国際会議を数年にわたって共同開催してきました。授業でも、SDGsのさまざまな指標に沿う形で、全学部のカリキュラムを考慮することが優先されています。

目標5の「ジェンダー平等」では、スーダンのアッファード女子大学が任命されました。女性が地域や国で活躍することを目指す教育が進められ、「ジェンダーと開発」「ジェンダーと平和研究」など、ジェンダーを専門とする四つの修士課程が開設されています。

目標16の「平和と公正」では、イギリスのデ・モントフォート大学が選ばれました。難民や移民との共生を目指す国連のキャンペーンで主導的な役割を担う大学として、難民の若者たちに教育の機会を提供するとともに、難民と移民の尊厳を守る重要性を訴え、難民の人たちの体験を記録し、共有するプロジェクトを推進しています。

日本の大学では、目標9の「産業と技術革新」の分野で、長岡技術科学大学が任命されました。

これらの17大学が3年間の任期を通し、SDGsのそれぞれの目標の取り組みを牽引していくことが期待されているのです。

国連広報局でアカデミック・インパクトの責任者を務めるラム・ダモダラン氏は、「学問は他者を利し、学生は何かを生み出す。SDGsに取り組んでいる大学ほど、この組み合わせが効果的で劇的に作用している場所はない」と強調していますが、私もまた、大学が持つ限りない可能性を強く感じてなりません。

大学には社会の〝希望と安心の港〟としての力が宿っており、その力を人類益のために発揮する意義は、極めて大きいのです。

そこで私が呼び掛けたいのは、この17大学を中心に〝SDGs支援の旗〟を力強く掲げる大学の輪をさらに広げることです。

アカデミック・インパクトの加盟大学をはじめ、多くの大学が、力点を置くSDGsの目標を表明して、意欲的な挑戦を行うキャンペーンを進めていってはどうでしょうか。

また、同じ分野に取り組む大学間の協力を推進し、学生のグローバルな連帯を広げる意義を込めて、国連創設75周年を迎える来年に「SDGsのための世界大学会議」を開催することを提案したい。

青年の役割を重視する国連の「ユース2030」の戦略では、創設75周年などで国連のサミットが行われる際に青年の声を強めることや、国連事務総長と青年との定期的な対話の場を設けることを促しています。

その一環として、各国の教育者と学生の代表が参加する世界大学会議を開催し、SDGs推進の機運を高めるとともに、「国連事務総長と学生との対話フォーラム」を実現してはどうかと思うのです。

創価大学とSUAの意欲的な活動

これまで私は、創価大学の創立者として「大学交流の推進」に力を入れるとともに、世界の諸大学の総長や学長と「大学の社会的使命」を巡る対話を重ねてきました。

17大学の一つに選ばれたアルゼンチンのブエノスアイレス大学とも交流があり、長年にわたり総長を務めたオスカル・シュベロフ氏とお会いした時には、積年の思いを次のように述べたことがあります。

「私は『大学間の交流』によって、世界のよりよき将来のために『新しい知恵』と『新しい価値』が生まれてくると期待しています。対話と相互理解のなかからこそ、何らかの『新しい力』と『新しい理想の方向性』が創造されると信ずるからです」

その際、シュベロフ氏が「世界の大学は共通の課題をかかえています。その解決のために、各大学は力を合わすべきです」と共感を寄せてくださり、「教育者は、一番困っている人に手を差し伸べるべきだ」との信念を語っておられたことが深く胸に残っています。

創価大学はアカデミック・インパクトの一員として、活動の柱となる10原則のうち、「人々の国際市民としての意識を高める」「平和、紛争解決を促す」「貧困問題に取り組む」「持続可能性を推進する」「異文化間の対話や相互理解を促進し、不寛容を取り除く」の五つの原則を中心に取り組んできました。

その上で、SDGsがスタートした16年以降は、国連難民高等弁務官事務所と「難民高等教育プログラム」の協定を結び、難民の学生を受け入れてきたほか、国連開発計画や国連食糧農業機関との協定に調印し、交流を進めています。

授業の面では、SDGsとつながりの深い平和・環境・開発・人権の分野からなる「世界市民教育科目群」を昨年設置しました。

このほか、持続可能な循環型社会の構築をはじめ、SDGsに関連するさまざまな研究に積極的に取り組んでいます。

アメリカ創価大学(SUA)でも、地球的な課題に関する教育に力を入れてきました。

学生が主体となって探究したいテーマを決めてクラスごとに共同研究や実地調査を行う、「ラーニング・クラスター」という伝統の教育プログラムがあるほか、ニューヨークの国連本部などで実施する研修の機会が設けられています。

また、国連の「国際非暴力デー」にあわせる形で、14年から毎年、「平和の文化と非暴力」会議を開催してきました。

私は2006年に発表した国連提言で、世界の大学が社会的使命の一つとして「国連支援の拠点」の機能を担うことを呼び掛けながら、国連の未来図を次のように提起したことがあります。学生や大学が「点」となり、それをつなぐネットワークが「線」となって、やがては国連支援の輪という「面」が地球全体に広がっていく――と。

その大学の輪は、アカデミック・インパクトの枠組みを通じて、世界1300以上の大学にまで広がりをみせています。

今回の拠点大学の発表を新たな契機として、世界のより多くの大学がSDGsの推進のためにさらに力を注ぎ、それぞれが積み上げてきた経験を共有しながら、誰も置き去りにしない地球社会を築くための行動の連帯を強めていくべきではないでしょうか。

三つの柱を軸に世界市民教育を

SGIでも、国連支援の活動の柱としてきた「世界市民教育」を通して、SDGsの推進のために積極的な役割を果たしていきたいと考えています。

これまでSGIが地球的な課題に関する展示を行ってきた会場の多くは、世界各地の大学であり、その中には、拠点大学に選ばれたノルウェーのベルゲン大学も含まれています。

大学こそ問題解決のための英知を結集し、新しいアプローチを育む揺籃であり、時代変革への力強いエネルギーは青年、なかんずく学生たちから生まれると確信するからです。

昨年6月、人権活動家のエスキベル博士との共同声明の発表が行われた場で、その共同声明を壇上で受け取ったのは二人の学生であり、その翌日に共同声明を巡る「青年の集い」を開催した場所も、ローマの学生街にある会場でした。

共同声明で私と博士は、「世界市民教育を通じた青年のエンパワーメント」の推進を提唱し、その柱として次の3点を挙げました。

①悲惨な出来事を繰り返さないため、「歴史の記憶」を胸に共通の意識を養う。

②地球は本来、人間が「共に暮らす家」であり、差異による排除を許してはならないことを学ぶ。

③政治や経済を〝人道的な方向〟へと向け、持続可能な未来を切り開くための英知を磨く。

今後も世界の大学との連携を深めながら、SDGsに関する意識啓発の展示などを行い、この3点に基づいた「世界市民教育」の裾野を着実に広げていきたいと思います。

ローマの学生街で「青年の集い」が開催された日(6月6日)は、くしくも創価学会の牧口初代会長の誕生日でありました。

創価学会とSGIの源流には牧口会長の教育思想がありますが、その要諦をなすメッセージは次のように綴られています。

「目的観の明確なる理解の上に築かれる教育こそ、やがては全人類がもつ矛盾と懐疑を克服するものであり、人類の永遠の勝利を意味するものである」(『牧口常三郎全集』第8巻、第三文明社。現代表記に改めた)

SGIは、この教育が持つ限りない可能性をどこまでも信じ、青年のエンパワーメントを通して、すべての人々が尊厳を輝かせて生きられる「持続可能で平和な地球社会」の建設に邁進していく決意です。