2020年のSGI提言

人間の内なる力の開花こそ時代創造の波を広げる源泉

第9段
人間の内なる力の開花こそ時代創造の波を広げる源泉

国籍は〝世界〟

再びヨーロッパを訪問する際にお会いできる機会があればと考え、連絡をとり合う中、ペッチェイ博士は、私どもがグアムで第1回「世界平和会議」を開催することを知り、メッセージを寄せてくださいました。

1975年1月26日、SGI発足の舞台となった「世界平和会議」で、私は参加者の署名簿の国籍欄に〝世界〟と記しました。

世界を「共同生活」を意識的に行う場と位置付け、各国の国民としてだけでなく「世界民」の自覚を併せ持つ重要性を訴えていた牧口初代会長、そして、世界のどの国の民衆も絶対に犠牲になってはならないとの思いで「地球民族主義」を提唱した戸田第2代会長の精神を、〝世界〟の二文字に凝縮させる形でSGIの原点として留めたいと考えたからです。

その4カ月後にペッチェイ博士とお会いした時、博士が手に携えていたのが、私が執筆した小説『人間革命』の英語版でした。

牧口・戸田両会長の二人の先師に始まる創価学会の歴史を綴った小説であり、博士がその際、私どもが進めてきた「人間革命」の運動――一人一人に具わる内なる力の開花を通して時代変革を目指す運動に対し、深い共感を寄せてくださったことは、何よりの後押しを得る思いがしてなりませんでした。

私との対談集の中でも、博士は述べていました。

「一人一人の人間には、これまで眠ったままに放置されてきた、しかし、この悪化しつつある人類の状態を是正するために発揮し、活用することのできる資質や能力が、本然的に備わっている」(『二十一世紀への警鐘』、『池田大作全集』第4巻所収)と。

時を経て今、世界の多くの青年たちが連帯して声を上げ、気候変動の問題に勇んで立ち向かおうとしている姿は、まさに博士が希望を託していた力が大きく開花し始めた姿ではないかと思えてなりません。

『成長の限界』の発刊当時に焦点となっていた公害や資源問題のように、局所的な対応で解決の糸口をつかむことができるものとは異なり、気候変動の原因は人々の生活や経済活動のあらゆる面に及んでいるだけに、状況の打開は決して容易ではありません。

現在、ローマクラブで共同会長を務めるサンドリン・ディクソン=デクレーブ氏が、昨年10月に欧州議会で紹介した「地球非常事態プラン」における緊急課題だけでも、低炭素エネルギーへの転換や再生可能エネルギーへの投資増大をはじめ、循環型経済への移行に関するものなど10項目が挙げられていました。

しかし、気候変動を巡る複雑で困難な状況も、受け止め方次第で、チャンスへと変えることができるのではないでしょうか。

対応すべき分野や場所が多岐にわたるという状況は、一方で、一人一人に具わる限りない力を発揮できる舞台が、それだけ多種多様な形で広がっていることでもあるからです。

SGIの代表も参加したユース気候サミットでは、その舞台の広がりを物語るような分科会が行われました。自然保護をはじめ、起業、金融、テクノロジー、芸術、スポーツ、ファッション、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、動画配信などの分野において、新しい発想で問題解決を前に進めようとするアプローチが多角的に模索されたのです。

青年に焦点当てた安保理の新決議を

その意味で私は、ユース気候サミットの直後に、国連で採択された「SDGサミット」の政治宣言の内容に注目しています。 

2030年までの期間を「持続可能な開発に向けた行動と遂行の10年」と位置付けた上で、取り組みを進めるにあたって永続的にパートナーシップを築くべき対象の一つとして「青年」を挙げていたからです。

この政治宣言を受けて、グテーレス事務総長は国連として「行動の10年」を立ち上げ、グローバルな行動と地域レベルでの行動に加えて、青年たちを含む民衆レベルでの行動を広げることを呼び掛けました。

そこで私は、国連の「行動の10年」における民衆レベルでの取り組みの一つとして、青年を中心に気候変動問題の解決策を共に生み出す挑戦を力強く進めることを提唱したい。

気候変動問題に対して先頭に立って行動するグレタ・トゥーンベリさんも、先月、スペインのマドリードで行われた気候変動枠組条約の第25回締約国会議(COP25)で、2030年までの10年間の意義に触れ、こう訴えていました。

「歴史上の偉大な変革は、すべて民衆から始まりました。待つ必要はありません。今この瞬間から変革を起こせるのです」と。

具体的には、今後もユース気候サミットを毎年開催する中で新しい国連の姿を定着させることに加えて、国連と市民社会が連携して〝気候変動問題に立ち向かう青年行動の10年〟ともいうべき活動を幅広く展開してはどうでしょうか。

また、その方向性を決定づける礎として、平和と安全保障における青年の役割を強調した国連安全保障理事会の2250決議に続く形で、気候変動の問題に関わる意思決定への青年の参画を主流化させるための安保理決議を採択することを提案したい。

9月には、国連創設75周年を記念するハイレベル会合の開催も予定されています。そこに世界の青年たちを重要なパートナーとして招くとともに、〝青年行動の10年〟の開始と安保理決議の採択をもって、国連の新章節を飾るべきではないでしょうか。

私どもも、青年部が2014年から進めてきた「SOKAグローバルアクション」を発展させる形で、本年から新たに「SOKAグローバルアクション2030」を始動しました。

その一環として、一人一人が日常生活の中で温室効果ガスの削減につながる行動を起こす「マイ・チャレンジ10」の活動をはじめ、草の根レベルで行動の連帯を広げる活動を進めることになっています。

気候変動の問題の解決をはじめ、SDGの目標を達成する道は、決して平坦なものではないでしょう。

しかし、青年たちの連帯がある限り、乗り越えられない壁など決してないと、私は固く信じてやまないのです。