2020年のSGI提言

人権法の中核をなす 「生命に対する権利」

第11段
人権法の中核をなす 「生命に対する権利」

核兵器禁止条約の採択後も、2018年10月に国連の自由権規約委員会が、〝核兵器の威嚇と使用は「生命に対する権利」の尊重と相容れない〟と明記した一般的意見を採択するという動きがありました。

「生命に対する権利」は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)において、緊急事態であっても例外なく守られなければならない〝逸脱できない権利〟として位置付けられており、国際人権法の中でも際立って重要とされているものです。

国際人権法の中核をなす権利との関係において、核兵器の威嚇と使用の重大な問題性が明確に指摘されたことの意義は、誠に大きいと思えてなりません。

私の師である戸田第2代会長が1957年9月に発表した「原水爆禁止宣言」で何よりの立脚点にしていたのも、世界の民衆の生存の権利を守る重要性にほかなりませんでした。

核兵器禁止条約の第1回締約国会合の開催を受ける形で、「核なき世界を選択する民衆フォーラム」を行い、この「生命に対する権利」に特に焦点を当てながら、人権の観点から核兵器の非人道性を浮き彫りにする議論を深めていってはどうかと思うのです。

母と子が安心して暮らせる世界を!

また、民衆フォーラムの開催を通して、核兵器の禁止によって築きたい世界の姿について、互いの思いを分かち合う場にしていくことを呼び掛けたい。

核兵器禁止条約の制定にあたって、これまで核問題とは結びつけられてこなかったジェンダーの視座が盛り込まれたのも、長らく見過ごされてきた被害の実相を浮かび上がらせた女性の声がきっかけでした。

2014年12月に行われた第3回の「核兵器の人道的影響に関する国際会議」で、メアリー・オルソンさんが、核兵器使用による放射線の有害性が男性よりも女性に顕著に表れる事実を明確に示したことを機に議論が深まる中で、核兵器禁止条約の前文に次の一文が明記されるようになったのです。

「女性及び男性の双方による平等、十分かつ効果的な参加は、持続可能な平和及び安全を促進し及び達成することにとり不可欠な要素であることを認識し、女性の核軍縮への効果的な参加を支援しかつ強化することを約束する」と。

これは、核兵器の禁止を通して目指すべき世界のビジョンの輪郭を、ジェンダーの視座から照らし出したものといえましょう。

創価学会が長年にわたって発刊してきた広島と長崎の被爆証言集にも、多くの女性たちの体験が収録されています。

このうち4年前に発刊した『女性たちのヒロシマ』では、14人の女性による証言を通し、被爆の影響による後遺症などへの不安を抱える中で、結婚や出産をはじめ、女性であるがゆえに強く受けてきた偏見や苦しみが綴られています。

しかし、そのメッセージは〝同じ悲劇を誰にも経験させたくない〟との被爆者としての強い実感にとどまるものではありません。

副題が「笑顔かがやく未来(あした)へ」となっているように、〝母と子が安心して平和に暮らせる世界を共に築きたい〟との誓いが脈打っているのです。

核兵器禁止条約の普遍性を高めるためには、「人間としての実感」に根差した思いを多くの人々の間で分かち合うことが、重要な意味を持ってくるのではないでしょうか。

平和や軍縮に関心を持つ人だけでなく、ジェンダーや人権の問題、さらには家族や子どもたちの未来に思いを馳せる人たちをはじめ、国や立場の違いを超えた多くの民衆の支持が結集されてこそ、核兵器禁止条約は「グローバルな人類の規範」としての力を宿していくに違いないと確信するのです。