2020年のSGI提言

誰も置き去りにしない社会へ レジリエンスの強化を推進

第15段
誰も置き去りにしない社会へ レジリエンスの強化を推進

障がいのある人を取り巻く状況

加えて、次回の防災GP会合の開催にあたって呼び掛けたいのは、気候変動で深刻な影響を受ける人々を置き去りにしないための社会づくりについて、重点的に討議を行うことです。

男女平等と社会的包摂の促進を掲げた昨年のジュネーブでの会合では、登壇者の半数と参加者の4割を女性が占めたほか、120人以上の障がいのある人が参加しました。

SDGのアドボケート(推進者)の一人で、会合に出席した南アフリカ共和国のエドワード・ンドプ氏は、災害時の社会的包摂への思いをこう述べました。

「障がい者は世界人口の15%を占める最大のマイノリティー(社会的な少数派)ですが、一貫して存在が忘れられてきました」

「(災害時に)障がい者を物理的に置き去りにしてしまう行為と、日常生活において排除が障がい者にもたらす極めて現実的な影響とは、つながりがあるのです」と。

脊髄性筋萎縮症を2歳の頃から患ってきたンドプ氏は、災害が起きた時に最も危険にさらされる人々に対する「社会的な態度の再構築」が必要となると訴えていたのです。

私は、防災と復興を支えるレジリエンス(困難を乗り越える力)の強化といっても、この一点を外してはならないと思います。

普段の生活の中で「共に生きる」というつながりを幾重にも育む土壌があってこそ、災害発生時から復興への歩みに至るまで、多くの人々の生命と尊厳を守る力を生み出し続けることができるからです。

また、ジュネーブ会合での災害とジェンダーを巡る討議でも、〝目に映らない存在にされてきた人々〟を〝目に見える存在〟にすることが大切になるとの指摘がありました。

日常生活において女性が置かれている状況は、社会的な慣習や差別意識などによって当たり前のように見なされることが多いために、本当に助けが必要な時に置き去りにされる恐れが強いことが懸念されます。

例えば、異常気象の影響で避難が必要になった時、女性は家を出るのが最後になることが多いといわれます。男性が離れた場所で働いている場合には、子どもたちや高齢者や病気の家族の世話をする必要があるため、家を出るのが遅れがちになるからです。

しかしその一方で、災害が起きた時に、地域で多くの人々を支える大きな力となってきたのは女性たちにほかなりませんでした。

昼間の星々の譬え

この点に関し、UNウィメン(国連女性機関)も、次のように留意を促しています。

被災直後から発揮されるリーダーシップや、地域でのレジリエンスの構築に果たす中心的役割など、防災における女性たちの実質的な貢献とともに、潜在的な貢献は、大きな可能性を持つ社会資産であるにもかかわらず、あまり注目されてこなかった――と。

明らかに存在するのに見過ごされがちになるという構造的な問題について考える時、私は大乗仏教の経典に出てくる〝昼間の星々〟の譬えを思い起こします。

天空には常に多くの星々が存在し、それぞれが輝きを放っているはずなのに、昼間は太陽の光があるために、星々の存在に意識が向かなくなることを示唆したものです。

日常生活においても災害時においても、地域での支え合いや助け合いの要の存在となってきたのは、女性たちであります。

地震などの災害に加えて、異常気象への対応策を考える上でも、あらゆる段階で女性の声を反映させることが、地域のレジリエンスの生命線になるのではないでしょうか。

本年は、ジェンダー平等の指針を明確に打ち出した第4回世界女性会議の「北京行動綱領」が採択されて25周年にあたります。

そこには、こう記されています。

「女性の地位向上及び女性と男性の平等の達成は、人権の問題であり、社会正義のための条件であって、女性の問題として切り離して見るべきではない。それは、持続可能で公正な、開発された社会を築くための唯一の道である」と。

このジェンダー平等の精神は、防災においても絶対に欠かせないものです。

その意味から言えば、災害にしても、気候変動に伴う異常気象にしても、インフラ整備などのハード面での防災だけでは、レジリエンスの強化を図ることはできない。

ジェンダー平等はもとより、日常生活の中で置き去りにされがちであった人々の存在を、地域社会におけるレジリエンスの同心円の中核に据えていくことが、強く求められると訴えたいのです。

私どもSGIも、信仰を基盤にした団体(FBO)として、災害時における緊急支援や、被災地の復興を後押しする活動に取り組む一方で、防災GP会合をはじめとする国際会議に継続して参加してきました。

2017年のメキシコでの防災GP会合では、「FBOによる地域主導の防災――仙台防災枠組の実践」と題するシンポジウムを行ったほか、キリスト教やイスラム教などさまざまな宗教的背景を持つFBOと協力して共同声明をまとめ、昨年のジュネーブ会合でも引き続いて共同声明を発表してきました。

また2018年3月に、他のFBOの4団体と連携して「持続可能な開発のためのアジア太平洋FBO連合(APFC)」を結成し、同年7月にモンゴルで開催されたアジア防災閣僚級会議に共同声明を提出しました。

そこには、私たち5団体の共通の決意を込めて、こう記しています。

「FBOの使命の根幹にあるのは、社会的な弱者を生む根本原因に対処する意志であり、社会の片隅に置かれた人々に希望と幸福をもたらすことである」

「信仰を基盤にした団体は、防災とレジリエンスの構築と人道的な行動を地域で進める上で重要な役割を果たしている」と。

今後も、この精神を他のFBOと共有しながら、すべての人々の尊厳を守るための社会的包摂のビジョンを掲げて、レジリエンスの強化を後押ししていきたいと思います。