2021年のSGI提言

途上国にワクチンを供給する国際的な枠組みを支援

第6段
途上国にワクチンを供給する国際的な枠組みを支援

COVAXの意義

翻って現在、新型コロナの世界的な感染拡大が止まらない中、有効なワクチンの開発と実用化を軌道に乗せることと併せて、各国へのワクチンの安定的な供給をどう確保するかが、大きな焦点になっています。

この難題に対応するために、WHOなどによって昨年4月に立ち上げられたのが、「COVAXファシリティー」という国際的な枠組みです。すべての国々が迅速かつ公平にワクチンを入手できる体制づくりを目指し、まずは今年の年末までに、20億回分のワクチンを参加国に提供することが計画されています。

COVAXの創設は、WHOによるパンデミック宣言のわずか1カ月後でした。それだけ対応が早かったのは、国際的な枠組みがないままでワクチンの開発競争が進めば、資金力のある国とない国との間でワクチンの確保に深刻な格差が生じたり、ワクチン価格が高騰したりすることが懸念されたからです。

WHOは昨年5月の総会決議で、ワクチンの広範な接種は、すべての国で分かち合うべき「グローバル公共財」であると強調しました。現在、COVAXの参加国は190カ国・地域に広がり、2月からの供給開始が目指されていますが、ワクチンの安定的な供給は、すべての主要国の協力を得て活動を支える体制が確立できるかどうかにかかっています。

私は、早期の参加を果たした日本が、アメリカやロシアなどの未加入国に、COVAXの枠組みに参加して積極的に関与していくことを、呼び掛けるべきではないかと訴えたい。

WHOと連携して、国際的なワクチン供給の運営を担う「GAVIワクチンアライアンス」のセス・バークレー代表は、日本が昨年10月に資金拠出を誓約し、いち早く途上国支援の姿勢を示したことの意義を、こう述べていました。

「この貴重な支援は、安全かつ有効な新型コロナワクチンの接種が可能となった時に、それを待つ長い列の後方に低所得国が取り残されないためだけでなく、感染の世界的な急拡大を止めるためにも、極めて重要な役割を果たします」と。

かつて、2000年に行われた九州・沖縄サミットで、議長国の日本が感染症対策をサミットの主要議題に初めて取り上げたことが契機となり、2年後の「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」の創設に結びついたことがありました。以来、日本をはじめ、多くの国が基金に対する支援を続ける中で、この三大感染症の脅威から、累計で世界の3800万人もの人々の命が救われてきたのです。

皆が享受できるグローバル公共財

思うに、新型コロナのパンデミックに立ち向かうグローバルな連帯を形作る上でも重要になってくるのは、「どれだけの命を共に救っていくのか」という〝プラス〟の面に着目し、そこに足場を築くことではないでしょうか。

感染者数の増加といった〝マイナス〟の面だけに目が向くと、他の国々との連携よりも、自国防衛的な発想に傾きがちになってしまうかもしれません。そうではなく、「どの国の人であろうと感染の脅威から救うことが、自国の人々の命を守ることにもつながる」との意識に立つことが欠かせないと思うのです。

先に私は、WHOがワクチンの広範な接種を「グローバル公共財」と位置付けていたことに触れましたが、COVAXの計画が軌道に乗った先には、それにもまして重要な意義を持つ「グローバル公共財」を分かち合える未来が開かれるに違いないと確信します。

「グローバル公共財」を巡る研究では、ワクチンのような製品や、インターネットなどの社会基盤だけがその対象ではなく、平和や環境といった、各国が協力して進める政策の結果としての〝世界全体が享受できる状態そのもの〟が含まれると考えられています。

気候変動の問題を例に挙げて言えば、各国で温室効果ガスの排出量削減に積極的に取り組むことで異常気象や海面上昇の悪化を抑えていくという、すべての国にとって望ましい状態が築かれるようなものです。

同様に、今回のパンデミックを各国の連帯で収束させた先には、「今後起こり得る感染症の脅威にも十分なレジリエンス(困難を乗り越える力)を備えた世界」への地平が大きく開かれ、〝将来にわたってあらゆる国の人々の命と健康を守る基盤〟が形作られていくと私は考えるのです。