2021年のSGI提言

意識変革を促す人権教育の力

第9段
意識変革を促す人権教育の力

釈尊の教えの精髄が説かれた法華経で展開されているのも、まさにそうした人間生命の触発のドラマにほかなりません。

万人に「尊極の生命」が宿っていることを説いた釈尊の教えに触れて、自身の尊厳のかけがえのなさを心の底から実感した人が、一人また一人と続く中で、他の人々の尊厳の重みにも気づき、「自他共の尊厳が輝く世界」を築いていく決意を互いに深め合っていく姿が描かれています。

その中で釈尊は、人間と人間とを隔てるあらゆる境界線を取り払い、根強い差別にさらされてきた女性たちをはじめ、過ちを犯してしまった人々に対しても、「尊極の生命」が宿っていることを強調しました。

このように法華経では、さまざまな形で差別を受け、虐げられてきた人々の尊厳を明らかにした宣言と、互いの存在の尊さを喜び合う声が満ち満ちており、そうした生命と生命との触発のドラマを通して、「万人の尊厳」という法理が確かな輪郭を帯びて現れているのです。

いかなる人も蔑ろにしない

私どもSGIは、この法華経が説く「万人の尊厳」の精神に基づき、いかなる差別も許さず、誰も蔑ろにされることのない社会の建設を目指し、国連が呼び掛ける人権教育の推進に一貫して力を注いできました。

1995年に始まった「人権教育のための国連10年」を支援する一環として、「現代世界の人権」展を8カ国40都市で開催し、2005年からは国連の新たな枠組みとして発足した「人権教育のための世界プログラム」を推進する活動を行ってきました。

また2011年に、人権教育の国際基準を初めて定めた「人権教育および研修に関する国連宣言」の採択を諸団体と協力して後押ししたほか、その後も国連人権高等弁務官事務所の協賛を得て、「変革の一歩――人権教育の力」展の開催や「人権教育ウェブサイト」の開設をしてきたのです。

昨年9月には国連人権理事会で「人権教育学習NGO作業部会」を代表して共同声明を読み上げ、青年に焦点を当てた「人権教育のための世界プログラム」の第4段階が昨年1月からスタートしたことに寄せて、こう訴えました。

「この行動計画は、人権教育と青年の可能性を大きく広げるものです。新型コロナウイルス感染症によって、実施に伴う困難の度は増しましたが、人権を実現するための主要な条件となる人権教育を『中断』することがあってはなりません」と。

折しも、「人権教育および研修に関する国連宣言」の採択から、本年で10周年の佳節を迎えます。その中で、人権教育の力で築くべきものとして掲げられていたのが、「誰も排除されない社会」でした。

円を描く時に、〝\(\)〟のどこかが少しでも欠けている限り、円の形が出来上がらないように、普遍的な人権の尊重も、差異や社会的な区別によって軽んじられたり、排除されていたりする人々がいる限り、スローガンのままで終わってしまい、完結することはない。

これまで社会的に構造化される中で〝蔑ろにされ、失われてきた人権や尊厳の弧〟を、誰の目にも見える形で浮かび上がらせ、共に尊厳の大切さを分かち合いながら、生き方を見直し、社会の在り方を変えていく連帯を後押しする力となるのが人権教育です。

SGIが取り組んできた人権教育も、「誰も排除されない社会」という〝円〟の形を、同じ世界に生きる人間として共に描き出していくことに眼目があります。

感染症にまつわる差別やデマの蔓延を防ぐ努力を重ねながら、コロナ危機に伴う不安や恐怖の暗雲を打ち払うとともに、〝誰も蔑ろにされてはならない〟との思いを人権文化として結実させる挑戦を、今こそ力強く巻き起こすべきではないでしょうか。