青年部と医学者による
第11回オンライン会議から㊤

青年部代表

  • 志賀青年部長
  • 西方男子部長
  • 大串女子部長
  • 田村副社会教育部長(創価大学教職大学院教授)
  • 青木女子青年教育者
    副委員長(中学校教諭)

医学者

  • 菖蒲川特任教授(新潟大学)
  • 藤原武男教授(東京医科歯科大学)
  • 庄司議長(創価青年医学者会議)
  • 勝又議長(創価女性医学者会議)

子どもが成長するポイント

  • 「自分は大切にされている」
    と感じられる
  • 温かい人間関係で結ばれている
  • 自ら考え学習する
テーマ01

コロナ禍の中で考える教育の未来

西方男子部長

新型コロナウイルスの感染拡大によって、教育現場でも、オンラインの活用が注目されています。今回は、実際にオンライン授業を実施した教員の方に、オンラインの長所や課題について伺いたいと思います。

青木女子青年教育者副委員長

私は中学2年の担任をしています。緊急事態宣言による休校で生徒たちは突然、仲間と会うことができなくなりました。だからこそ、オンラインの画面越しに学級開きをした時、生徒たちは本当にうれしそうで、誰もがつながりを求めていたことを感じました。

オンラインの長所は、体調不良やけがなどで思うように通学できない生徒を含め、誰もが気軽につながれることです。また、疲れたら休憩をとったり、興味がある分野について、とことん調べたり、自分のペースで学ぶことができます。

一方で、オンライン授業を実施して見えてきたのは、学習意欲を維持することが困難な点です。課題の提出率は次第に低下し、一人で学ぶことの難しさが露呈されました。

そこで、教科ごとに希望者がオンラインで学び合える機会を設け、生徒同士が協力して課題に取り組めるよう工夫しました。また、オンラインでの「ホームルーム」でも一人一人に声を掛け、全員が「主役」となれるように心掛けました。

それでも、生徒一人一人の「心の機微」をオンラインでつかむのは至難の業です。画面に顔を出すことにストレスを感じる生徒もいますし、個人やグループでのオンライン面談でも、画面越しに本音で語り合うことの難しさ、すぐに駆け付けてあげられないもどかしさも感じました。改めて、直接、触れ合う対面の重要性をかみしめました。

学校での授業が再開すると、生徒たちは同じ空間で学び合える喜びを感じたのでしょう。学習効率は驚くほど高まりました。オンラインでの経験があったからこそ、生徒一人一人の中の「対面の価値」がさらに高まったと感じています。

田村副社会教育部長

対面の価値を考える上で紹介したいのは、私が教職大学院の学生に“子どもが成長するために大事なこと”として伝えている、①自己存在感を与えられているか ②共感的人間関係が築けているか ③自己決定の時間と場があるか、との3点です。

1点目の「自己存在感」とは、「自分は大切にされている」と感じられているかどうかということ。2点目の「共感的人間関係」とは、温かい心の絆・つながりを基盤とした人間関係を意味します。3点目は、子どもが自分自身で学びのペースをつくり、探求する機会を与えていくことです。

オンラインの活用によって、この3点目は満たすことができます。しかし、1点目、2点目については、対面だからこそ培うことができる力だと思います。この二つを、オンラインのみで満たすことは容易ではありません。

それでも、青木さんの実践報告には、オンラインの壁を乗り越える知恵と工夫が詰まっています。一人一人の名前を呼んで声を掛けるといった実践は、「自分は大切にされている」という自己存在感を高め、温かい人間関係を築いていくことにつながります。

藤原武男教授

三つの観点は大変に重要であると思います。私の専門である社会疫学でも「自己存在感」はキーワードです。子どもたちの自己存在感を高めるためには、学校とともに、家庭のサポート、また家庭や学校以外の「第3の居場所」が重要です。

コロナ禍の中で、地域による教育格差や各家庭の通信環境の整備など、さまざまな課題が浮き彫りになりました。こうした課題は、単純にパソコンや通信設備の提供だけでは解決しません。家庭教育の役割や、さまざまな理由で子どもの勉強に関われない家庭のサポートの在り方、「第3の居場所」を地域に設置していくことなど、公衆衛生上の課題と密接に関わってくると感じます。

テーマ02

オンラインの長所
「どこでも自分のペースで参加できる」
対面の長所
「人と人の触発が互いの生命力を高める」

庄司議長

とりわけ小学校低学年までは、家庭でのサポートが重要だと思います。自発的な学習を促す上で、大事なポイントは何でしょうか。

田村副社会教育部長

小学校低学年の児童が、一人で自発的に勉強することは難しいです。

まずは親が「一緒に勉強しよう」と声を掛け、学習を始めるきっかけを作ることです。また、一つ一つの間違いをいちいち指摘せずに見守り、何度も間違える“つまずき”に対しては手を差し伸べていくようにすると、子どもの学習意欲も高まります。

ともかく、子どもの頑張りを褒めてあげることが大切です。例えば、漢字の書き取り練習で、漢字を「10個書く」ことと「丁寧に書く」ことを同時に行うのは、その発達段階では難しい子どももいます。せっかく10個書いたのに、字が汚いからといって、親が消しゴムで全部消してしまう、となると勉強へのやる気がそがれてしまいます。どんなに字が汚くても、10個書いたことを評価し、「次は丁寧に書こうね」と声を掛けるなど、焦らずに学びに向かわせていくことが大事です。

菖蒲川特任教授

私の子どもたちも休校期間中、学校から出された宿題に黙々と取り組んでいました。しかし、学校が再開された後では、一人では理解できなかったことが、先生や友達と一緒に学ぶ中で、自然とできるようになっているのを見て驚きました。

その上で、ICT(情報通信技術)を活用した教育は、じっくりと課題に取り組んだり、新たな才能を開いたり、教育格差を縮め、個性を大いに伸ばしていける大きな可能性を秘めていると期待がふくらみます。

テーマ03

「情報伝達はオンライン」
「人間の絆を強めるのは対面主」
――特性を生かした使い分けを

田村副社会教育部長

2020年度からスタートした文部科学省の「学習指導要領」には、新しい時代を生きる子どもたちに必要な力として「三つの柱」が示されました。知識・技能という基礎を身に付けること、それを応用する思考力・判断力・表現力とともに挙げられているのが「学びに向かう力」です。

オンラインかどうかに関わらず、「学びたい」「知りたい」「成長したい」という意欲を育んでいくことが重要だと思います。

ただ私は、コロナ禍は、教師がいて、周りにクラスメートがいる「学校」という存在の意味や重要性を、多くの人が再認識する機会になったと思っています。対面の授業には、教師が学ぶ目的を伝えたり、生徒同士が触発を生んだりといった、学習意欲をかき立てる要素が多くあります。

また、学び方には個人で学ぶ「個別学習」や、皆と対話しながら学ぶ「協同学習」などがありますが、今、注目されているのは「プロジェクト型の学習」です。これは、生徒や学生が自ら問いを立て、それを解決していく学習です。

「個別学習」では、分からないところを何度も学ぶことができるオンラインが適しています。

協同学習やプロジェクト型の学習は、同じ場所で、同じ時間に、同じことを学ぶ「学校」という教育環境でこそ、より効果を発揮します。もちろん、オンライン学習でも、工夫によっては、それに近い効果を得られる場合もあるかもしれません。

ともあれ、オンラインにはオンラインの良さ、対面には対面の良さがあります。例えば“情報の伝達はオンライン”“対話によって理解を深め、人間関係を強めるのは対面”といったように、それぞれの特性を生かすにはどうすればよいかを検討する中で、オンラインと対面を使い分ける新しい教育モデルを生み出していくチャンスだと思っています。

勝又議長

先日、創価女性医学者会議の集いをオンラインで行いましたが、これまで仕事の時間や距離などの制約によって会合に集うのが難しかったメンバーが参加でき、喜びが広がりました。「こうでなければならない」と決めつけるのではなく、温かな励ましを送るため、その人にあった方法を考えていくことが重要だと思いました。

志賀青年部長

多様性の時代の中で、それぞれの個性や考え方を尊重しながら、新しい日常を生み出すことが社会的な喫緊の課題となっています。学会青年部としても、この半年間、オンラインを積極的に活用することで、今の話にあったような利点を認識することができました。

その上で、改めて今、感じているのは、対面の重要性です。直接会うことで、オンラインでは伝えきれない“熱”を感じることができます。その熱が納得と共感を生む。やはり、人と人との直接的な触れ合いが互いの生命力を高めていきます。オンラインと対面を場面に応じて使い分けながら、新たな価値を創造していきたいと思います。

<㊦に続く>