青年部と医学者による
第16回オンライン会議から

青年部代表
- 志賀青年部長
- 西方男子部長
- 大串女子部長
医学者
- 菖蒲川特任教授(新潟大学)
- 藤原武男教授(東京医科歯科大学)
- 庄司議長(創価青年医学者会議)
- 勝又議長(創価女性医学者会議)
- 村山議長(創価女性医学者会議)
新規感染者数の減少は
一人一人の対策の成果
志賀青年部長
政府は、首都圏や関西などの10都府県に対して、緊急事態宣言を3月7日まで延長することを決定しました。「飲食店の時短営業」を中心に、メリハリをつけた対策の継続とともに、個々人の基本的な感染防止対策への、さらなる協力を呼び掛けています。
菖蒲川特任教授
全体的に新規感染者数は、宣言期間中に減少傾向へと転じています。
「マスクの着用」「手洗い・手指の消毒」「身体的距離の確保」といった私たち一人一人の基本的な感染防止対策と、宣言が出ている都府県では「不要不急の外出の自粛」「テレワークの推進」といった、人の接触を減らす努力の成果が、確実に表れてきていると言えます。
一方で、いまだ十分に減少しているとは言えない地域があり、多くの地域で医療体制も引き続き逼迫しています。
感染者数が減少してきているのに、なぜ入院患者数や重症者数がなかなか減らないのか。その理由として、これまで入院できずに自宅待機となっていた人も入院できるようになったことや、感染者のうち、重症化するリスクが高い高齢者が占める割合が増えていることなどが挙げられます。
また、新型コロナは発症してから7~10日前後に重症化する傾向がありますので、重症者は、新規感染者よりも遅れて数字に表れてきます。
こうしたことを踏まえ、緊急事態宣言延長の焦点である「医療体制の改善」を図るためには、感染者数の減少を確実なものにしていく必要があります。
新型コロナが国内に確認されてから1年以上が経過した今、国内のワクチン接種に向けての準備が急ピッチで進んでいます。
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)は、これまでの感染症と同様に必ず終息の日が訪れます。
私たちは、“ここが正念場”と捉え、引き続き、もうひと踏ん張りの感染防止対策に努めてまいりたいと思います。
他者を身近に感じる
想像力を今こそ発揮
大串女子部長
池田先生は、本年の「SGIの日」に寄せて、記念提言「危機の時代に価値創造の光を」を発表してくださいました。その中で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会的・経済的な混乱に直面している状況に言及されつつ、さまざまな視点を示されています。
その一つに「感染拡大が続く中で、故人を共に追悼する場を得ることが難しくなっている今、統計的な数字の奥にある『一つひとつの命』の重みを見失わないことが、ますます大切になっている」とあり、私自身、改めて祈りを深くしています。
村山議長
医療現場では、感染防止の観点から、入院患者の家族であっても、病室への立ち入りが制限されています。新型コロナ以外の病気で亡くなった場合でも、愛する人の最期に家族が立ち会えないことも多い状況です。その悲しみは計り知れません。
医療体制の逼迫は、私たち医療従事者にとっても、「命の重み」への葛藤を余儀なくされる、厳しい状況を生んでいます。
だからこそ、仏法の「生命尊厳の哲学」を持った医師として、少しでも患者さんやご家族に寄り添える存在でありたいと、創価女性医学者会議のメンバーと励まし合っています。
藤原武男教授
感染者数、重症者数、死者数など、私たちは毎日、数値化された情報を受け取っています。これはともすると、その数字の奥にある“一人の人間の命を感じる身体感覚”が徐々に麻痺してしまうことが懸念されます。
また、これだけの期間、自分で自分を守ることに意識が傾いていく中で、弱い立場の人々の窮状が見過ごされがちになっています。これは、新型コロナの流行以前から公衆衛生上の課題であった「貧困」「社会的孤立」「健康格差」などが顕在化したとも言えます。
一方で、私たちは、コロナ禍によって、日頃からの“人と人とのつながり”の重要性を再認識することができたという側面もあると思います。
感染を防止することが最優先とはいえ、関わりを避け、目の前で苦しんでいる人を放っておいてよいのか――この「放っておけない」という感覚を忘れないことが、個々人のあらゆる場面で、「命の重み」を見失わないことにつながるのではないでしょうか。
勝又議長
池田先生は提言で、感染防止対策に取り組む中で社会に広がってきた“見知らぬ大勢の人たちを守るための気遣い”を基盤にしながら、「さまざまな困難を抱えた人たち」の存在に目を向け、その苦しみと生きづらさを取り除くことを、コロナ危機に直面した社会を立て直すための急所と位置付けるべきではないか、と提唱されています。
藤原武男教授
今一度、「何のための感染防止対策か」を考えていく必要があります。もちろん、「自分の命を守るため」でありますが、「さまざまな困難を抱えた人たち」の存在を無視した感染防止対策では、回り回って自分の感染リスクが高まると考えられます。
だからこそ、自分だけでなく、「見知らぬ大勢の人たちを守るため」という大きな目的観に立つことが非常に大切です。
公衆衛生上の危機にあっては、国の方針が重要であることは言うまでもありませんが、こうした互いを思いやる連帯が、早期収束への鍵を握っていると言えると思います。
この理解をさらに一歩進めていくためには、想像力、すなわち、普段の親密な関わりの少し外側にいる“他者”を、いかに身近に感じていけるかが重要ではないでしょうか。
重症化するリスクが高い高齢者をはじめ、今この瞬間にも、経済的な困窮や病気によって生活の基盤を奪われ、明日を生きる希望を失いつつある方や、孤独に耐え続けている方が多くいます。
「生きづらさ」といっても千差万別であり、誰がどのような生きづらさを感じているか、生きづらさを取り除くためにどのような支援が必要かは、“他者”に話を聞いてみなくては分かりません。
その意味で、学会の皆さんは、地域に根ざし、日頃から多くの“他者”と関わり、その思いにじっくりと耳を傾け、困っている人には必要な支援の手を差し伸べています。こうした豊かなつながりが今、社会全体で強く求められていると思います。
「正しく恐れる」ため
情報の見極めを冷静に
西方男子部長
新型コロナを巡る虚偽の情報やデマの拡散が今もなお、大きな社会問題となっています。
提言の中で池田先生は、虚偽の情報などの放置によって懸念されるのは、「デマの根にある強い差別や偏見が、感染症への恐怖に乗じる形で人々を疑心暗鬼に陥らせて、社会の亀裂を深め、誰もが守られるべき尊厳と人権に“断層”を生じさせること」と示してくださっています。
菖蒲川特任教授
コロナ禍にあって、人々の不安をあおるような情報には注意が必要だと思います。誤った情報に踊らされないためにも、まずは冷静に情報の真偽を確かめることが大切です。良かれと思って拡散した情報が誤りであれば、家族や友人に負の影響を及ぼしてしまうかもしれません。
具体的なポイントとしては、一つの情報をすぐに鵜呑みにしないこと。情報の出どころが信頼できるか、複数の媒体や情報源で繰り返し発信されている内容であるか、などを確認することが挙げられます。
庄司議長
情報を一人だけで見極めるのは容易ではありません。自分の考え方に近い情報に触れると、誤った情報であっても信じてしまいがちです。冷静な判断をするためにも、信頼する家族や友人らと積極的に意見交換することも有益だと思います。
ともあれ、虚偽の情報やデマの放置による、差別や偏見、不安や恐れの助長は、「生きづらさ」にも直結していくと思います。
池田先生は提言で、他者を嫌悪することで自身の安堵を得ようとする人間の心理についての分析を紹介されつつ、「肝要となるのは、自分が感じる『生きづらさ』を、他者を貶める『嫌悪感』に向けて解消しようとするのではなく、他の人々が感じている『生きづらさ』にも思いをはせながら、厳しい社会の状況を変えるための“建設的な行動”の輪を広げること」と示されています。
藤原武男教授
危機の時代に、自らが“他者”と積極的につながり、「励ます側」となって“他者”の「生きづらさ」と真正面から向き合っていく。こうした“建設的な行動”が広がれば、従前の課題である「貧困」「社会的孤立」「健康格差」などを乗り越える大きな転換点になると思います。
こういう時だからこそ、感染防止対策を万全に講じながら、周囲と積極的に関わっていく。こうして“人と人とのつながり”を強化することが、誰も置き去りにしない社会を築く基盤となっていきます。
志賀青年部長
新型コロナの影響は、多方面にわたり、一人一人の状況も異なります。だからこそ、それぞれの「生きづらさ」に思いをはせながら、いかなる状況も共に「価値創造の力」に変えていく。私たちが日々実践している「励ましの対話」が、いやまして重要であると思います。
私たち青年部は、創価の希望の哲学を胸に、厳しい社会状況を変えるための“建設的な行動”を続けていきます。